3月 11th, 2018|ブログ|

 民泊新法の施行が近づいてきました。事前相談は3月15日開始とされており、弊所も既に受任している案件があります。
 しかし、民泊新法を活用した完全な「民泊」は日数制限が180日とされているため、稼働率を考えると事業には不向きです。一方、Airbnbなどの仲介サイトは6月15日以降許可取得物件や届出済物件しか掲載されなくなると言われており、この噂から今無許可民泊を運営していると思われる方からの相談も増えています。

 無許可でやっている民泊には、無許可でやり続けている理由があるのでしょうけれど、京都では「取りたくても取れない」物件がたくさんあります。そう、それはいわゆる「路地奥」に建っている風情ある長屋です。

 最近、路地奥物件を買ってから「許可を取りたい」というご相談が以前にも増して増えているため、問題点を整理するために本稿を出稿します。
京都の路地

結論

 不動産チラシなどで「再建築不可」とされている建物を購入して簡易宿所の許可を得るのはきわめてハードルが高い、と言える。

前提

 旅館業法の許可を取得して営業を営むには旅館業の許可が必要になります。
 しかし、これはいわばソフトの問題であって、ハード面では別の法律に要件が定められています(旅館業法にも一部ハード面に関する規定はあります)。それは建築基準法であり消防法です。
 つまり、適法に旅館を運営するためには、旅館業法以外にも遵守しなければならない法律がある、ということになります。

既存の建物を購入して旅館にする場合

 既存の建物を購入し旅館として使う場合、次の2パターンが考えられます。

  • 元から旅館をやっていた建物を購入して旅館として使う。
  • 旅館以外の用途で使われていた建物を購入して旅館として使う。

 この時、最初の「元から旅館をやっていた建物」を購入するのであれば、元の用途自体が【旅館】であった訳ですから、建物の用途は変わりません。
 ところが、それ以外の用途で使われていた建物を旅館として使う場合は、建築基準法上の用途を変更することになり、建築基準法第87条を考慮する必要が出てきます。
 この用途変更については、ごく簡単にまとめると「原則的に用途変更をする場合は確認申請が必要となるが、100㎡を超えない場合は確認申請は必要ない」というのが実務的な指針になります。ここで一般の方がよく「確認申請が必要ないのだから建築基準法は関係ない」と考えらるようですが、これは正しい理解ではありません。
 100㎡を超えない場合の用途変更は「確認申請が必要ないだけであって、用途変更に関する各種の規定は満たす必要がある」というのが考え方になります。

住宅を旅館に用途変更して使う場合

 さて、京都市で一般化している用途変更、すなわち普通の戸建て住宅を中古で買って用途変更し、旅館として使う場合を想定して検討してみましょう。
 当事務所では、次の順序で聞き取りをしています。

  1. 前面道路について
  2. 用途地域について
  3. 階数について

 この、最初の前面道路、これが本稿の主題ですが、用途変更するためには、建築基準法(以下「建基法」と省略)の各種規定を満たすことが前提となります。道路については建築基準法第43条第1項で次のように規定されています。

(敷地等と道路との関係)
第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。

 これは要約すると「建物を建てるとき(用途変更するとき)は、建築基準法で道路と認められた道路に2m以上接道しなければなりませんよ」という意味になります。
 ですので、道路に面してなければその時点で用途変更は原則無理、ということになるわけです。

建築基準法上の道路であるかどうかを調べる方法

 そうであるなら、旅館ができるかどうかは、まず道路に接しているかどうかを調べる必要があります。京都市ではインターネット上で道路種別を確認できるサービスを提供しており、そこから道路の種類を調べることができます。
 道路種別は地図に着色する形式で示されており、その色が「赤色」であれば、その敷地に建つ建物を旅館として使うことは原則として難しいということになります。
 そして、京都市において行き止まりの「路地状」の通路についてはほとんどが赤色着色になっています。ですので「京都市内では原則として路地状物件で許可は取れない」という結論が導き出されるという理屈になるのです。

原則に対する例外の存在

 先ほどから「原則」と繰り返していますが、この原則に対し例外が存在することも事実です。ただし、その例外は要件がきわめて厳格で、一般化してインターネットで公開できるほど周知されている訳ではありません。ですので、この例外については個別相談で対応していますが、ただ一つ、現時点で確実なことを一つお伝えできます。それは、

建築基準法施行以後に建築(一部増築含む)された建物については、非道路に接道しているだけでは例外なく許可が取れない。

 ということです。確かに路地奥の不動産は安い。しかしそれは再建築不可で土地の価値が低いからに他なりません。ですので、旅館に転用する目的で路地物件を探すのであれば、建築基準法施行以前に建っていた建物で、その路地部分も建築基準法施行以前から通路して存在していることが最低限の要件となります。それをクリアしても所有形態や通路幅員など、クリアすべき要件はたくさんあります。ですので、結論としては「路地状物件は安易に手を出してはいけない」ということになります。

まとめ

 話しが長くなりましたのでまとめておきましょう。

  • 住宅として使われていた建物を旅館として転用するためには建基法も考慮する必要がある。
  • 建基法では、敷地が道路に接道しているかどうかの確認が第一歩となる。
  • 接道要件を満たしていない場合、建物は旅館として使うことができない。
  • 京都市内の路地状通路はほとんど道路とみなされていない。
  • つまり、路地状通路のみに接っしている敷地は接道要件を満たすことができない。
  • よって路地奥の建物で旅館を運営するのは難しい。

 という理屈になります。

路地状敷地が非道路でなかった場合

 では、仮に路地状敷地が非道路でなかった場合、何の問題もなく旅館への用途変更ができるのかというと、それも簡単ではありません。
 何故なら、京都市建築基準条例第9条に「原則として路地状敷地に特殊建築物を建築してはいけませんよ」と定められているからです。この規定にも例外規定がおかれているのですが、クリアするのはハードルがかなり高い要件です。

 以上の検討から、路地にのみ接している敷地に建っている建物の用途を変更し旅館として用いるのはなかなかに困難な手順が必要となります。
 ただし、先述のとおりこれには例外もあって、現に弊所でも路地の奥の奥で、建築審査課との協議を経て旅館業の許可を取得した建物もあります。買ってから後悔してもはじまりませんので、買う前に建築士などの専門家へご相談なさることをお勧め致します。

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