10月 20th, 2015|ブログ|

マンションの杭工事を行った会社がデータを改ざんしていた問題で、国土交通大臣が建設会社に過去の工事に関する概要を報告するよう指示したとの報道がありました(朝日新聞デジタル10月20日(火)11時30分配信記事)。

これだけ聞くと当然の話に思えますが、国土交通大臣といえども、根拠となる法令がなければ民間企業に指示などできないはずです。
本日は、この時事問題を取り上げながら、建設業許可の存在意義を考えます。
建設業許可

建設業に必要な許可

建設業を営む場合、一定規模の工事を請け負うためには、国土交通大臣か都道府県知事の許可が必要となります。
この許可の根拠法令は建設業法であり、その第一条は同法の存在意義を次のように定めています。

この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

長い一文ですが、建設業法の目的は「建設工事の適正な施工確保」と「発注者の保護」が主眼となっているように読むことができます。
そして、その目的実現ために「建設業を営む者の資質の向上」と「建設工事の請負契約の適正化」等を図るとしています。
この目的を実現するための制度が建設業許可であると言えるでしょう。

建設業許可の歴史

建設業許可の歴史は、建設業法が施行された昭和24年までさかのぼります。当時は、許可制ではなく登録制にして業者の質を高めようとしていたようです。
その後、高度経済成長期からバブル経済、その後の景気低迷を経ながら、建設業法も時代に即した改正がなされてきましたが、そのトレンドは「厳格化」と言えます。

建設業においては、品質を担保するために技術者を確保することが必要となりますが、その技術者の名義貸しが横行していました。これでは、本来の目的である「発注者保護」が実現できません。そこで、常勤性確認などを厳重な書類確認で行い、基準を満たさない建設業者を廃除するような仕組みが出来上がってきました。

また、資格の持続性を担保するため、許可の有効期限を5年とし、更新手続をしなければ失効する仕組みとなっています。

最近の改正では、建設業労働者保護のため、厚生年金や健康保険の加入状況についての申告をさせるなど、よりシビアな審査がなされるようになっています。

監督権限

国(或いは都道府県知事)の許可を受けて事業を行っているということは、その監督に服することになりますが、それは建設業法第28条に定められています。

第二十八条  国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当する場合(…中略…)においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。特定建設業者が第四十一条第二項又は第三項の規定による勧告に従わない場合において必要があると認めるときも、同様とする。
一  建設業者が建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。
二  建設業者が請負契約に関し不誠実な行為をしたとき。
(以下省略)

許可権者は、指示をするだけでなく、営業停止や許可取消の処分を行います。

建設業許可の重要性と限界

この時事問題がクローズアップされた時、賢明な記者さんは建設業の許可書類を閲覧されたことでしょう。
建設業許可は発注者保護が目的ですので、申請書のほとんどを閲覧することが可能です。
構造物の工事は複雑で、私たちはそれが真正に施工されたものかどうか知る術がありません。ですので、事前の段階で、しっかりした業者しか施工させないでおこうというのが建設業許可の発想です。

しかし、これは制度ですのでどうしても限界があります。今回のデータ改ざんは許可制度では防ぎようのない種類のもの、すなわち、ビジネスパーソンとしての資質とプライドの問題でした。

とはいえ、こんな事件が一件でも起こると、全ての構造物までが疑わしく考えられるのもまた事実です。建設業は一般人には分かりにくいからこそ、しっかりとした仕事をする必要がある。建設業に限ったことではなく、職業人ひとりひとりが自分のあり方を自問する機会と捉えてもよいのではないかと感じました。

許可や認可も意味があってのこと

日本は官僚国家だ、と言われます。事実、許認可の種類は一説によると1万種類を超えるそうです。
それらの中には、形骸化したり、利権が絡んで残存しているものも少なくはないでしょう。けれども、許可そのものにはやはり意図や意味があり、それを知って働くということは大切なことだと私は思います。建設業許可は、その中でも「発注者の保護」という分かりやすい目的を掲げており、許可の制度設計もそれに則した意義深いものであると私は思います。

私も心して建設業許可の書面に向き合わなければと感じました。今後も職務に精通するよう研鑽に励みます。

最後までお読み頂いてありがとうございます。
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