5月 17th, 2018|ブログ|

 民泊について、多くのお問い合わせが続いています。
 しかし、最近、購入後のお問い合わせで「それちょっと難しい(というか実質無理)ですよ?」という事例がことのほか増えています。
 そういった事例を紹介することで、逆に買ってはいけない物件について学んで頂きたく、本稿を出稿します。

一軒おいた隣が許可済物件でも取れない場合がある

非道路の物件だったけど、一軒おいた隣が許可を受けていたし、不動産屋さんも取れるのではないかというので購入。結果許可取得に至らなかった。

 ホームページ内にも書いていますが、路地・非道路にしか接道していない建物は、原則旅館業の許可は取れません。この「原則」というのがミソで、例外的に取れるケースもあります。
 しかし、この例外に該当させるためには、入念な事前調査が必要となります。例外が認められる最低条件は次の3つです。

□建物が昭和25年以前に建てられ、その後増築の登記がなされていないもの。
□非道路(路地部分)について、道路に通じるまでの土地に共有持分を持っているか、公図が旗竿上に分筆されていて単独の所有権を有していること。
□通路部分の最も狭い部分(突起物があればその突起物を含めた一番狭い部分)が、幅員1.5m以上有していること。

 この3つの条件が揃ってはじめて、例外に該当する可能性があることになります。
 逆に言うと、この3つの条件のうちどれか一つでも満たさないものがあれば、それだけでその建物で旅館業の許可を取るのは無理、と言えます(但し、増築の登記がされていても、その原因日付が「年月日不詳」であればは可能性が残ります)。

 本件のご相談を受けたのは、解体直前。既に購入し、プランもほぼ決まってから、という状況でした。

 つまり、もう前に進むしかなかった訳ですが、道路に通じる路地部分の所有権を持っていなかったため、諦めざるを得ない結果になりました。

 許可を得ていた一軒おいたお隣さんは、建築基準法を絡めた審査がなされていなかった時代に許可を取られたものです。現状、京都市はそのような許可物件があることを認めつつ、そうであったとしても「お隣さんで取れているから」「同じ路地内で取っている建物があるから」という理由で許可を認めることはない、と断言しています。

 ですので、同じ路地内に許可を得ている物件があったとしても、それは許可取得を保証する担保にはなりません。このことをよく理解しておく必要があります。

許可済み物件を買っても取り直せない場合がある

許可取得済の物件を買ったけれど、それが建築基準法と現在の条例の基準を満たしておらず再度の申請ができなくなった。

 最近、許可取得済物件の売買が盛んに行われています。
 旅館業の許可は、個人間では相続する場合を除いて承継できないため、許可取得済の物件を買ったとしてもその許可を引き継ぐことはできず、新たに取り直しになります。
 ただし、路地や非道路のみの接道で許可を得ている物件で新たに許可を取り直そうとしても、建築基準法上の要件を満たしていなければ、許可の再取得はできません。

 平成30年3月15日から京都市の旅館業にかかる条例が変更され、避難通路幅が1.5m以上であることを示すための配置図が添付書類となりました。また、この1.5mは審査事項となっており、現地調査の際に実際に測量されることになります。

 本件は、避難通路幅の狭い部分が1.2mと建築基準法の基準を満たしていませんでした。この許可も古い時代に取得されており、そこまで審査が行き届いていなかったものと推測されますが、だからといって取り直しができることにはなりません。

 旅館業の取り直しの場合、廃止届を提出して新規に許可申請を申請することになります(「ハイシン」と呼ばれています)。この時、新規申請で省略できる書類はなく、配置図の添付も必要になります。
 ですので、道幅1.5mない建物は、それだけで旅館の許可は取れなくなってしまうのです。

 許可済だからと言って安易に購入してはとんでもなく痛い目に遭う可能性があります。とりあえず路地や非道路接道の物件を買う前に、専門家に相談するのが望ましいと言えるでしょう。

連棟長屋はホントに危険

連棟長屋を買ったけれど、長屋全体の面積が300㎡を超えていたため消防法上の小規模特例が使えなくなり、計画が頓挫した。

 長屋を購入する場合も、必ず事前に、旅館業に強い専門家に相談すべき、と言えます。

 長屋で旅館をするには、ケアしなければならないポイントが3つあります。
□長屋全体の面積が300㎡を超えていないことを確認する。
□その壁の状態を確認する。
□長屋の他の家屋が、住宅なのかお商売をやっているのか、その用途を確認する(参考)。

 長屋全体の面積が300㎡を超える場合、消防法上の小規模特例が使えません。この小規模特例とは、簡単に言うと火災警報装置器が無線のものでよい、という特例でして、300㎡を超えると、有線にして、しかも長屋全体に設置する必要が出てきます。これを実現するのはほぼ不可能であるため、300㎡の確認はとても大切になります。なお、この300㎡は登記ではなく実際の面積を基準に考えるという点に注意が必要です。

 長屋の壁は、国土交通省告示の準耐火仕様であることが必要です。ですので、リフォーム前に壁の状態を確認して消防署と打合せをする必要があります。

 本件では、リフォーム完了後に相談を受けました。購入前から一級建築士が関与していたという話しでしたが、長屋面積は300㎡を超えており、建築士は消防署に相談にいかないまま壁をきれいに施工してしまっていました。相談者は旅館業をする前提で建物のリフォームを依頼していたのに、誘導灯もつけずに引き渡しがなされていました。少なくとも私はこの建築士と絶対に仕事をしたくないと思いますが、ここからこの建物を宿泊事業に活用していく必要があります。

 出稿時現在、この300㎡の上限基準が500㎡に変更される可能性があると言われており、現状はこの規定変更を待っている状態です。

登記簿上2階建だけど実質3階

登記簿上2階建とされている建物を購入したけれど、建築基準法上3階建になると思料されるため相談だけで終わった。

 木造3階建で、3階部分を使って宿泊事業をやるのは無理です。3階部分を使うためには建物が耐火建築物でなければなりません。しかし、木造の耐火建築物というのは一般住宅ではまだまだ少数です(皆無といっても差し支えないくらいに)。
 ですので、木造の場合3階建でないことが大切な前提になります。

 本件は、1階が駐車場であって、玄関ドアは階段上がった2階部分にあるけれど、登記上は「木造2階建」になっている、という事案でした。

 登記における階数の考え方と建築基準法の階数の考え方は同じではないため、登記上2階建だけれど、実質的には3階建である「隠れ3階」というのは意外にあります。旅館をやる場合には、これはとても重要な論点です。

 私は建築基準法にそこまで精通していないため、建築士を通じて京都市に確認を依頼したところ、3階建である旨の回答を得たため、私はその旨を伝え、お手伝いはしないことにしました。

収益物件の転用は簡単ではありません

何も知らずマンション1棟買って旅館に転用しようと思ったら、完了検査済証がなかった。

 旅館業の許可を簡単に進めるためには建物のうち旅館業に供する面積が100㎡以下の必要があります。
 100㎡を超えると建築基準法上の用途変更確認申請が必要になるため、手続が極端に煩雑になります。

 けれど、100㎡オーバーであっても許可を取りたいというご相談が多くあります。

 このご相談で聴き取るのは次の2つです。
□建築年月日と構造
□検査済証があるかないか

 まず、建物が木造で昭和25年以前に建てられている場合、それは用途変更の土俵に載せることができる建物であると言えます。この場合、私はこの相談をそのまま建築士に取り次ぎます。

 次に、建物が昭和25年以降に建てられている場合、検査済証の有無が大きなポイントになります。
 マンションやアパートの転用で検査済証がなかった場合、旅館への転用は「ほぼ無理」と考えて差し支えありません。用途変更の確認申請はなかなかハードルが高い。

 本件は外国のお客様からのご相談でした。おそらく日本の各種法令についてはほとんどご存じなかったのでしょう。最近はこういう外国人のお客様からのご相談が増えています。
 検査済証がないという時点で難しいことをお伝えし、相談対応のみで終わりました。

 以上、結果的に許可取得に至らなかった事例をご紹介致しました。
逆に言うと、これらの事例に該当していないことを確認しておけば、不良物件購入の確率は下がることになります。しかし、最も望ましいのは買ってからではなく、買う前に専門家に相談することです。

 上記の失敗事例は、たとえば弊所に相談があれば事前に「買わない方がいい」とアドバイス差し上げていた物件ばかりです。不動産屋さんは買ってもらってはじめて儲けになりますので「多分大丈夫でしょう」などとグレーな発言で逃げ道を残しつつ勧められる場合も多いと思われます。
 けれど、旅館業の許可が取れなかったとしても、結局誰も責任は取ってくれません。

 弊所では、簡易なアドバイスは無料でしていますし、現地調査などは54,000円で行い報告書の提出も行っています。1,300万円無駄にするリスクを背負うか、54,000円で安心を買うか。私なら後者を選びますが、みなさんはいかがでしょうか。

最後までお読み頂いてありがとうございます。
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