5月 24th, 2015|ブログ|

先日、ご同業の先生から自転車同士の交通事故についてご相談を頂きました。
今日は、自転車事故で後遺症が残った場合の補償問題について検討します。

  • 自転車同士の事故の後遺障害を認定する仕組みはない。
  • 自転車同士の事故の場合、相手への求償を想定した対応が必要であろう。
  • 自身の保険内容についても検討しておくと良い。

自転車事故

自転車同士の事故による後遺障害

事件の概要は、自転車同士が衝突し、一方に(その一方は後遺障害だと考える)生活に支障がある程度の身体的不具合がのこったというものです。そして、私には、求償について相談があったがどうしたものか?というお話しがありました。

これは、非常に難しいご相談です。私がこの件についてアドバイス差し上げた内容はさておき、本件を一般論として、問題点と進め方について検討しようというのが本稿の主題です。後遺障害が残った場合については、後半部分で検討します。

自転車事故の問題点

まずは、自転車事故についての問題点を概観しておきましょう。

自転車には強制保険の仕組みがない

自動車や自動二輪には、強制保険として自動車賠償責任保険があります。この保険によって、たとえ任意保険に加入していない車を加害側とする事故にあったとしても、被害者は一定の補償を受けることができます。

  • 傷害による損害:最高120万円
  • 後遺障害による損害:最高4,000万円
  • 死亡による損害:最高3,000万円

一方、自転車には自賠責に相当するような強制保険の仕組みがありません。

自動車の保有台数は、平成27年2月現在で81,093,798台(一般財団法人 自動車検査登録情報協会)であり、自転車の保有台数は、試算値ではありますが、平成17年で86,647,000台(社団法人自転車協会)とされています。

自転車の方が保有台数が多いにもかかわらず、事故に関する制度整備がなされていなというのは、大きな問題と言えるでしょう。

認識が低い

自転車同士の事故であっても「交通事故」であり、怪我を負った場合警察を呼んで人身事故対応にすべきですが、そのような認識があまりに低いと言えるでしょう。

以前、自転車同士の事故に遭遇し「警察を呼びましょうか」と言いましたが、双方当事者が「いいです」とお答えになりました。けっこうな衝突で出血もあったんですが「大丈夫です」と走り去って行かれました。出血で大丈夫…相手が自動車だったら、どれほど軽傷でもそうはならないでしょう。このあたり、一人ひとりが認識を新たにすべきと感じます。

過失割合が争われる可能性が大きい

自動車事故の場合、過失割合については「青本」「赤い本」と言った参考基準があり、これに修正要素を加えたものが過失割合とされることが一般的です。

一方、自転車同士の事故に独自の過失割合基準はありません。自転車は、道路交通法では軽車両と概念されますので、原則としては自動車事故の過失割合を基礎に考えていくことになりますが、自転車の通行について道路交通法が改正されていますので、過失が争いになる事案は少なくないでしょう。

任意保険の加入率が低い

自転車事故に関する任意保険の加入率はまだまだ低い。加害者になった場合は、様々な保険の特約にある個人賠償責任特約でカバーできる可能性がありますが、自分が被害者になった場合に備える保険はようやく認知されてきたのが実情です。

解決するための制度が未整備

自転車事故については、自賠責保険に類する制度がないため、後遺症に関する認定システムもなければ、紛争処理センターのような機関もありません。
従って、対立した利害関係を解決するためには、通常の一般民事事件と同じように、当事者間で解決できない場合は調停や裁判を経ることになるでしょう(ADRについては主題とは関係ないため言及しません)。

このように自転車事故は、交通事故でありながら、問題や課題とも言えるべき点が多く、これが社会問題になりつつあるというのが現状でしょう。

では、自転車事故にあった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。

相手方の連絡先を確認しておく

自転車で接触事故にあった場合、軽微であっても連絡先を確認しておくと良いでしょう。逆に、相手方の連絡先を確認しておかなった場合、数時間後、数日後に痛みが出ても、相手を特定して求償していくことは極めて困難になります。勇気を出して「お互いのため」と言い、連絡先を確認或いは交換しておきましょう。

警察へ通報する

自転車事故で怪我をした場合は、迷わず警察を呼びましょう。警察を呼んでおかないと、怪我と交通事故の因果関係を証明すること自体が難しくなってしまいます。

人身事故として届け出ましょう

お怪我をなさっている以上、人身事故扱いとすることが重要です。たとえば自動車事故に遭うと、保険会社から物損事故扱いでも人身事故と同様の補償をするとか、警察からもどうすべきか考えれば良いというコメントがなされることがあります。

しかし、物損事故と人身事故を切り分けた制度がある以上、怪我をしたなら人身事故として取り扱ってもらうことが肝要です。物損事故では実況見分がなされないため、自転車事故では特に過失で争いになることが予想されます。なお、人身事故扱いにするためには、当然に医師の診察を受けて診断書を警察に提出することが必要です。

あらゆる保険を確認しましょう

自転車事故の場合、双方が怪我を負う事案が少なくありません。ご自身だけでなく、相手方も怪我を負っている場合、求償することだけでなく、求償される場合も考えなければなりません。

怪我を負わせた場合に使える保険、怪我を負わされた場合に使える保険を確認し、使える保険は全て使うようにしましょう。

怪我を負わされた場合、相手が各種保険に加入していなくても、自身の自動車保険に人身傷害保険を付帯させていれば、その保険で損害を賄える場合もあります。

また、相手に対しては、自転車保険の他、個人賠償責任特約に加入していれば、そこから補償を受けることが可能になりますので、保険の確認は非常に重要です。

怪我を負い、後遺症が残った場合の手続

さて、本稿の主題です。

自転車でお怪我をなされた場合であっても、事案によっては、後遺障害が残存する場合も考えられます。この場合は、自動車事故と同じように最良の結果(完治)を目指して最悪の事態(後遺症)に備えるという姿勢が大切です。

つまり、治療の連続性・一貫性ですね。

相手方が保険に加入していない場合でも、求償を争う場合、自賠責に準じた手続を踏んでおくことは有効です。仮に完治すれば、それをもって損害額が確定しますし、後遺症が残存した場合は、医師に自賠責に準じた後遺障害診断を求め、それを根拠に争うことが可能になります。

これは、あくまで資料の一つとなるものでしかありません。覆される可能性もあります。
しかし、不法行為の立証責任は、主張する側にあるのが民法の原則ですので、後遺障害という損害について、相手に求償する場合、損害である後遺障害の立証責任は、主張者側が負うことになります。

その意味でも後遺障害について注意しておくことは大切ですし、立証するには、自賠責のプロセスを活用するのが妥当と言えるでしょう。

損害確定から解決まで

相手方が、過失割合等も含め誠実に対応し、責任を認めてくれればそれで済みますが、そう簡単に進むことがないのが実情です。

相手方と争いがある場合は、調停や裁判に判断を求めなければならないことになります。
しかし、時間が経過して専門家に相談しても、対応が後手になってしまうことが少なくありません。たとえば、治療中に、自賠責の後遺障害等級認定に準じたプロセスをイメージするかどうかで、治療回数や期間、治療先が大きく変わってきます。
整骨院にいくら通っても、診断書を書いてもらうことはできません。後から整形外科に切り替えても、事故との因果関係や治療の一貫性から後遺障害を否定される可能性があることは容易に想像できます。

このように、自転車事故は、体系的な解決方法が整備されていないからこそ、早期に専門家へ相談すべきだと言えるでしょう。

まとめ

私は、日常生活で自転車事故を目にすることがあります。お互いが転倒し、鞄から荷物が飛び出しているような状態でも、ほとんどの場合「大丈夫ですか?」「大丈夫です」でお互いがその場を去って行かれます。出血が見られる場合も同様です。

しかし、その場を離れると、相手方の探索も困難になりますし、事故と怪我の因果関係も立証しづらくなってしまいます。

やはり、上記のように相手方の連絡先を確認し、同時に警察へ通報して万が一の自体に備える必要があるのではないでしょうか。

当職は、行政書士業を行うほか、一般社団法人全国交通事故被害者支援センターを設立して広く被害者の皆様のご相談に対応しております。お困りのことがおありでしたらお気軽にご相談くださいませ。

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