5月 20th, 2018|ブログ|

 登記などで使われる「原本還付請求」が行政手続一般に使える手続であるかどうかについて検討します。
 本稿の検討は私見に基づくことを予めご了承願います。

行政手続において、行政側から原本還付請求を拒まれた場合、それを認める規定がなければ原本還付はできないと考えるのが相当であろう。

原本還付請求とは

 原本還付請求とは、ある手続において認証印が付された書類を提出する際に、その原本とともにコピーを添付して行政側に原本確認を求め、コピーを行政側に残し、原本は申請者に返してもらう制度です。
 たとえば、相続が発生した場合、その相続人を確定するために戸籍類を取得していくことになります。そして、各種の手続でその戸籍を使います。不動産を持っていれば法務局へ登記申請をします。預貯金があれば銀行宛に使うでしょう。自動車があればその名義変更に戸籍が必要になります。
 このように、戸籍類は方々に提出する必要がありますが、提出先の数だけ戸籍が必要であるとすると、戸籍を集めるだけで相当の出費が必要になります。この時、戸籍類をコピーして(不動産登記申請の場合は相続関係説明図を作成して)、原本を返してもらうことができたら余分な戸籍を取らずに済むし、最後には手元に保管しておくことができて便利ですよね。

 原本還付とは、こういった「役所側で原本であることをしっかり確認できるなら、コピーつければ原本返してあげますよ」という仕組みです。

根拠条文

 実務では「原本還付」と省略されるこの手続は、正確には「原本還付請求」と言うとおり、行政側に求めることができる手続き上の権利ですから、根拠条文があります。その代表的なものが不動産登記規則第55条でしょう。以下に条文を引用します。

(添付書面の原本の還付請求)
第55条  
 書面申請をした申請人は、申請書の添付書面(磁気ディスクを除く。)の原本の還付を請求することができる。ただし、令第16条第2項 、第18条第2項若しくは第19条第2項又はこの省令第48条第1項第三号 (第50条第2項において準用する場合を含む。)若しくは第49条第2項第三号 の印鑑に関する証明書及び当該申請のためにのみ作成された委任状その他の書面については、この限りでない。(以下省略)

 この規定は、私は重要であると考えています。つまり、規則において原本還付請求を認めているということは、反射的に考えると、規則において認められていない場合は原則できないと思えるのです。
 他にも、商業登記法や特許法の規則において原本還付が明文で認められています。

その他の手続

 では、登記以外の手続ではどうでしょうか。「民事訴訟 原本還付」で検索すると、「原本還付申請書」という仙台家裁のPDFファイルが最上位に表示されます。
 であれば、民事訴訟法や関連規則で原本還付に関する規定があるかというと、私が探した限りでは見つかりませんでした。
 行政書士の鉄板手続と言えば建設業許可がありますが、身分証明書やないこと証明の他、事務所の使用権限を証するために提出する登記事項証明書(定められた添付書類ではない)であっても原本の提出が必要で還付は認められていません。
 区役所で戸籍類を代理請求する場合など「委任状はもらっておいてよろしいですか?」と、還付可能であることを前提とした問いかけをされることがあります。

 規則に書いてある手続もあるし、規則に書いてないが原本還付を認めている手続もある。また、認めていない手続もある。これらを論理の無理なく整理するにはどう考えればいいのでしょうか。

整理の結果

 私は、この原本還付については次のように整理して考えています。

法律や規則で原本還付が認められている場合

 当然これは問題なく原本還付が請求できますね。

法律や規則に明文の規定がない場合

 この場合、役所に問い合わせ、認められるというのであれば還付請求をし、認められないのであれば還付請求はできないものと考えます。
 つまり、規定がないけれど原本還付を認めているのはその手続を所管する部署の便宜的取扱であって、役所自体は原本還付請求に応じる義務があるとは言えないと思います。

 原本還付というのは、一般化された手続のように思えるかもしれませんが、不動産登記規則の規定から考えると、決してそうではなくて、手続によって認められる場合もあるし、認められない場合もある。根拠規則があれば認められるが、そうでない場合はこちらから「原本還付してよ」と押し切ることはできないと思えるのですが、みなさんはいかがでしょうか。

 ある手続をしている時、横の席でおそらく行政書士さんと思わしき人が、割と強硬に原本還付を請求していらっしゃり、その理屈として「原本提出は行政指導だ。従う義務はない。原本還付できないなら根拠を示せ」と言うのが聞こえてきました。いやいやいや。私に言わせればそれは逆で、申請者側が原本還付請求できる根拠を示さなければ無理だと思います。京都の運輸支局では相続書類の還付も認めてくれますし、行政の人はちゃんと書類の性質にそった取扱をしていらっしゃるようにも思えます。申請者と受ける側(公務員)は敵じゃない。お互いを尊重して気持ちよく仕事できる資格者でありたいものです。

最後までお読み頂いてありがとうございます。
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