5月 15th, 2015|ブログ|

独立行政法人国民生活センターが『アダルトサイトとの解約交渉を行政書士はできません!』という書面を発表しています。

リスティング広告で「消費生活センター」で検索すると、公的機関と誤認され得るような文言で表示させていたようですね。まったく困ったもので、ただでさえ「代書屋」と言われている行政書士の社会的評価に影響を及ぼしかねません。

しかし、この独立行政法人国民生活センターの書面や、その他の報道には、熟考や検討を要する記載があるのも事実です。

そこで、本件に対し私見をもって検討してみます。

  • 行政書士は、一定の書類作成の代理はできるが、一般の状況で代弁はできない。
  • 行政書士は、解約交渉はできないが、解約の通知は代理作成できる。
  • 行政書士は、解約交渉を前提とする場合、相談に応じるべきでない。

業務範囲は守らなきゃ

行政書士の業務範囲を確認しよう

行政書士が業としてできることは行政書士法で法定されています。それを今一度確認しておきましょう。

(業務)
第一条の二  行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2  行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

第一条の三  行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一  (省略)
二  (省略)
三  前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四  前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。

条文だけ見ると「何のことやら」という文章ですので、当職が意訳します。

  • 行政書士は、他の資格者の独占業務はできない。
  • 独占業務以外であれば、官公署に提出する書類を作成(代書)できる。
  • 官公署に提出する場合、代書だけでなく、代理もできる(つまり申請人になれる)。
  • 行政書士は、権利義務や事実証明に関する書類を作成できる。
  • その書類を代理人として作成することもできる。

(特定行政書士業務や不服申立については検討の対象ではないため今回は省きます。)

事例への当てはめ

では、この理解を前提に事例に当てはめて考えて行きます。

設例としては、国民生活センターの文書を参考に設定します。

何かのサイトに個人情報を登録しただけで、まだサービスを受けていない状況で高額な対価を求められた。

行政書士は「返還請求」を行うことができるか?

国民生活センターの文書によると、「返還請求」を行うことは弁護士法に違反している可能性が高いと書かれています。

これは、ある意味で妥当な見解であり、別の意味では、誤解を招いてしまう見解と言えます。

まず、返還請求を書面で行う場合、その書面作成を代書すること自体は、行政書士の業務範囲と言えるでしょう。ここに見解の相違はないはずです(但し後述)。

返還請求に関する書面(たとえば内容証明)を、代理人として発送することは、外見的には行政書士の業務範囲と言えるかもしれませんが「請求」行為の本質を考えると、私は業務範囲を超えていると考えます。

そもそも、この事案の根本は、ソフトウェア技術と人間心理を悪用した不当請求です。つまり、利害が対立した構造の一方当事者の相談に乗ることになります。

この時点で、行政書士は法テラスか市民無料法律相談を紹介すべきである、と私は思います。内容証明の代書は、確かに業務の範囲内と言えるでしょう。しかし、事後のフォローができない(代弁できない)のに、そこだけやって報酬を頂いても、お客様をサポートしたことにはなりません。

お客様が求めていらっしゃるのは「安心」なのです。そして、この事案で安心を提供できる最適な資格者は弁護士をおいて他にありません。

従って、行政書士は、返還請求書面を代書することは法律に違背していないが、専門家なら受託も相談も受けるべきではなく、より最適な相談先を紹介することが相談者に最も応えることになると考えます。

行政書士は「解約交渉」を行うことができるか?

できません。1ミリの余地もなく交渉を行うことはできません。これは非弁行為に該当します。こういう行政書士がいるから他のマジメな行政書士も十把一絡げで見られてしまう。多くの行政書士は普通に許認可や車庫証明で汗をかきながら仕事しているということを知って頂きたいですね(特に弁護士の皆様には)。

行政書士は、個人情報の削除を請求できるか。

削除を求める通告文書の代書はできると解します。代理人としての通知は、外見的には業務範囲かもしれないが、その実際は業務遂行に交渉を伴う可能性が高いので、受託も受任もするべきではないと考えます。

また、通告文書の代書についても、受託すべきではなく、相談を受けた時点で法テラスか市民無料法律相談を案内すべきと考えます。

その他の検討

朝日新聞デジタルが2015年5月14日(木)19時47分に配信したインターネット記事【アダルトサイト高額請求、行政書士が「違法」交渉】の中には『行政書士は解約の相談に乗ることはできる』という一文がありますが、これは弁護士からみた場合誤った解釈と言えるでしょうし、私もそう思います。

解約とは契約解除、すなわち法律行為であって、解約の相談は弁護士しかできません。
「解約することは決めているので内容証明を出したい」と言った相談ならどうか、という声が聞こえてきそうですが、それは行政書士でもできるでしょうけれど、やるべきではないのです。
紛争性が予見される場合は、行政書士は相談に応じるのではなく、相談先をご紹介してあげるくらいの割り切りがなければ、行政書士に対するこういった風当たりはいつになってもなくならないのではないでしょうか。

問題の所在

本件の問題としては、グレーな非弁を扱う行政書士ばかりがフォーカスされるのでしょうけれど、もっと大切な問題があります。

それは、公的機関と誤認され得るような広告が認められているという実体です。
私もリスティング広告を見ましたが、行政書士なんてまだマシだなと思いました。探偵社から、法人格が見えない団体までがリスティングをしていらっしゃる。

ここに対する規制やフィルタリングも、すごく大切ではないでしょうか。

「弁護士>行政書士」という図式は世間一般的な印象でしょうけれど、NPOを隠れ蓑にして相続や後見を受任している弁護士は皆無でしょうか?過剰広告をしている弁護士は誰もいないでしょうか?

ウェブ広告に関する問題、検索に対する問題は、今後様々な局面で顕在化していくでしょうし、被害が多くなる前に、自主規制や枠組み作りが必要になってくると私は思います。

まとめ

インターネットで不当請求を受けた方々は、動転し、心細い思いで相談機関を探されます。そういう心理につけ込んで、本質的な解決にならないかも知れないのに仕事を受けているようでは、相談者さんは二次被害に遭っていると言っても過言ではありません。

行政書士も民法は試験科目になっているし「交渉」ではなく「通知の連続」という屁理屈を言うひともいるかもしれない。

でも、そんな詭弁を弄して集客するのではなく、本当の意味で相談者、依頼者の目線になって対応できる行政書士でありたいと思いますね。

※簡裁代理権を有する司法書士も交渉ができますが、論点ではなかったため本文では「弁護士」とのみ表現しています。簡裁代理権を有する司法書士さんも交渉ができますが、それについて詳しくお知りなりたい場合、最寄りの司法書士会へお問い合わせください。

最後までお読み頂いてありがとうございます。
 一生懸命書いたオリジナルの文章なのでコピーはしないでくださいね。IPアドレスとコピーされた場所を特定できるシステムになっています。(さらに詳しく)