はじめての民泊新法

 3月15日事前受け付け開始、民泊新法に関する動きが慌ただしくなっています。
 知られているようで知られていないこの民泊新法の世界観をごく簡単に紹介致します。

  • 正式名称は「住宅宿泊事業法」と言います。
  • 届出制での運用となります。
  • 構造設備の基本は台所・浴室・便所・洗面です。
  • 管理運営は委託しなければならない可能性があります。
  • お住まいの自治体に条例委任されている部分が多い制度です。

住宅宿泊事業法とは

 民泊新法の正式名称は「住宅宿泊事業法」です。これは、文字通り「住宅」をして「宿泊」の用途に供することを「事業」とすることを認める法律、と言えます。

普通の家を「宿泊用」に貸し出してもいいよ。

 という法律ですね。

 逆に考えると、今まではそれができませんでした。特区民泊が認められている地域を除き、日本では「民泊」は違法で、宿泊のために部屋を提供するには旅館業の許可を得なければなりませんでした。よく問題になるのが不動産賃貸借との相違です。旅館業も貸室業・貸家業も部屋を提供することに違いはありません。
 ただ、1日だけ貸す場合も不動産賃貸借で事足りるなら、旅館業法は不要になってしまいます。厚生労働省では「生活の本拠を置く」かどうかを基準に解釈し、置く場合は不動産賃貸借であって、そうでない場合は旅館業という認識を取っているようです。

Airbnbの浸透、外国人観光客の急増、東京オリンピックでの宿泊施設確保など、複数の要因が重なって法制化が検討され、平成29年6月16日公布されました。そして、平成30年6月15日から施行がはじまります。

民泊と旅館業

 前述のとおり、特区民泊を除き日本では民泊は違法です。ですので旅館業の許可を取得してゲストハウスを開業する訳ですが、許可を得ればそれはもはや「民泊」とは呼べないはずです。しかし、近隣住民の認識からすれば管理者が常駐しないものは全て「民泊」と捉えがちであり、旅館業の許可を取ってゲストハウスを開業することを「民泊」と考えられているケースが少なからずあります。これは、そのゲストハウスをどの角度から見るか、という問題なのでしょう。

住宅宿泊事業法の特徴

 さて、この民泊新法は、実体に合わせて作られています。
 今、ゲストハウスを運営するには、事業主・建物を管理する主体・リスティングを管理する主体の三者の存在が必要になっています。
 収益を上げるためには全てを事業主がやればいいのですが、民泊新法ではそれが簡単にはできません。
 まずは必要な物・人を確認します。

住宅宿泊事業を運営するのに必要なリソース

  • 住宅
  • 住宅宿泊事業者
  • 住宅宿泊管理業者
  • 住宅宿泊仲介業者

 それぞれみていきましょう。

住宅

 民泊新法で事業をはじめるには、住宅が必要です。当たり前のことのようですが、意外に大切です。つまり「住宅として基本的な設備を有している必要がある」ということです。
 旅館業法で簡易宿所の許可を取る際、キッチンは必要ありません。火事のリスクを考えるとむしろ不要と言えるくらいです。しかし、民泊新法では台所が必要になると明記されています。但し、京都の旅館業では浴槽が必須で随分悩まされますが、民泊新法はガイドラインで「シャワーで良い」とされています。京都はどうなることやら。

住宅宿泊事業者

 これは文字通り、事業を行おうとする人ですね。自己所有物件だけでなく賃貸で届け出るケースも考えられます。

住宅宿泊管理業者

 事業主に課せられている様々な義務を代わってやってくれる業者です。国土交通省への登録が必要となります。
「管理は自分でするよ」と考えたいところですが、そう簡単ではありません。届出室数が6を超える場合、また、同一敷地内か隣接敷地内の住宅でない場合、管理委託が義務づけられます。
 つまり、自分で管理できるのは

  • 5室以下の部屋数で
  • 自宅の敷地か隣接敷地内の建物で届出する時

 という限られたケースになってきます。

住宅宿泊仲介業者

 これは、リスティングをする会社のことですね。Airbnbやブッキングドットコムのことです。民泊のマッチングアプリの中には旅行業の許可を得ていないものがあったようですが、仲介業者として観光庁へ登録することにより適法に事業をすることができるようになります。

消防の論点

 民泊新法でも、自動火災警報装置や非常用照明と言った防火設備が求められています。
 京都では、基本的に旅館業法で消防法令適合通知書を得るのと全く同じ設備・手順が必要となります。

 大切なことは、消防関係で何の対応もせず民泊新法の届出が出せるということはありません。必ず何らかの対応をする必要は出てきます。

まとめ

 とてもおおざっぱではありますが、民泊新法を概観しました。
 民泊新法は「住宅」を「宿泊施設」として貸し出すことを「事業」にできる法律ですが、安全を考慮し消防の関与が必要になります。
 また、自分で管理できなくはないのですが、なかなか厳しい要件が入っています。

 京都では既にゲストハウスビジネスが飽和状態になりつつあるような気配で、廃業したり早々に転売されているケースも散見されるようになりました。
 とはいえ、この民泊新法は、空き部屋で困っていらっしゃるようなマンションオーナーさんにとっては有力な選択肢となるでしょう。