建設業許可と確定申告書の控え【京都府版】

 個人で建設業許可の新規申請をする場合、経営管理責任者としての資格を有することを疎明する資料として、確定申告書(控)の原本提示が求められます。
 しかし、建設業許可においては思いの外、確定申告をなさっていらっしゃらないケースがあり、経営管理責任者としての疎明資料をどのようにするかというのが問題になります。

 この取扱は都道府県によってまちまちで、本稿では京都府の原則的な対応をご紹介致します。

  • 確定申告書の控えが提示できない場合、原則として経営管理責任者であることを疎明するのは難しい。
  • 経歴や自営してからの状況に応じて対応を考える必要がある。

『建設業許可の申請は思いの外難しいものですね』

確定申告書の控えが必要な理由

 建設業法では、次のように、許可を受けようとする人が5年以上の経営業務の管理責任者として経験を有していることが許可の基準になっています。。

(許可の基準)
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 法人である場合においてはその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
ロ 国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者
(以下省略)

 そして、確定申告書の控えの提示は、法人ではなく個人で建設業許可を得ようとする申請者が経営経験を有していることを確認する資料として必要になります。

 建設業許可の具体的な添付書類については「建設業許可事務ガイドラインについて(平成13年4月3日国総建第97号)」を根拠として所管部署が手続の詳細を決定しています。
 どの行政手続にも言えることですが、各都道府県毎にその取扱方針はまちまちであり、インターネットに記載されている鹿児島の方式を根拠として北海道で申請しようとしても、必ずそれが通るとは限りません。ですので、インターネット上の情報を鵜呑みにせず、都道府県単位の情報を重要視なさる方がよいでしょう。

 さて、確定申告書の控えについても、このガイドラインをベースに必要とされている訳ですが、ガイドラインの中に「確定申告書」という言葉が出てくる訳ではなく、経営管理者の要件を示す一つの資料として提示を求められている、というのが実務の実情です。

 それでは、京都府における取扱について検討していきましょう。

京都府における原則的な取扱

 京都府では、確定申告書(控)の提示ができない場合「原則として経営管理責任者の資格を有することを疎明するのは難しい」というスタンスであると思われます。
 代わりの資料になりそうなものを色々提案したりもするのですが、なかなか難しい。税務署に提出する開業届だけでは認められず、事業主として契約している保険の証券でも難しいと言われます。

 ですので、基本的に確定申告書(控)の提示は必須に近い条件になる、というのが実務に携わる人間の印象です。

確定申告書(控)がない場合の対処法

 確定申告書がない場合、それは「確定申告書をなくした」場合と「確定申告していない」という二つのケースが考えられます。

確定申告書をなくした場合

 この場合、国税庁へ情報開示請求を行えば資料を揃えることができます。ただし、このケースは少数でしょう。

確定申告していない場合

 実際はこのケースが多数です。この場合、ケース毎に対応を考えることになります。

最近数年間は確定申告していて、何年か分が足りない場合

 この場合、前職で経営に関する補佐経験があるならば、その期間と確定申告書がある年数を合算して6年以上であれば申請することが可能です。
 つまり、平成28・27・26年の各年の確定申告書があれば、それ以前に3年間経営を補佐していたという証明書を出してもらえば合算で6年になります。
 また、このケースの場合、確定申告していない年について、改めて申告するという方法もあります。しかし、これには税金がかかることになりますので、慎重な検討が必要かもしれません。

まったく確定申告していない場合

 この場合、補佐経験を検討するか改めて申告するという方法が主な選択肢になります。

まとめ

 経営業務の管理責任者であったことを疎明する、というのは真剣に考えるとなかなか難しい問題です。確定申告書以外に何かないだろうかと色々考えますが、妙案は思いつきません。京都府では交渉中に「公的な書類」という言葉が出てくることもあり、そうなってくると一段とハードルが上がってしまいます。
 ただ、上述のように期間の一部が足らないのであれば補佐経験と組み合わせることによりクリアできるケースも出てきますので、どうしても取る必要がある場合は土木事務所や地元の専門家に相談なさると良いでしょう。

 なお、建設業許可については、たとえ500万円以下の工事であってもコンプライアンスの関係などから、元請業者から許可取得を求められるというケースが増えています。「いつか建設業」とお考えの場合、しっかり申告しておかれることをお勧め致します。