成年後見における専門家の「着服」について

 当事務所は、成年後見に関し、後見監督人制度を有効活用するべき旨、3年前から主張しています。

 しかし、平成28年4月13日(水)22時34分配信の読売新聞インターネット版記事によると、弁護士や司法書士が昨年1年間に被後見人の財産を着服した件数は前年比15件増の37件となり、被害額は、分かっているだけで1億1千万円を超えているとのことです。

成年後見制度の現実

 私は、司法書士事務所に勤務していたことがあるので、成年後見制度の運用について、その現実を見てきました。
 お金のある人には、後見人はすぐにつきます。後見人は毎月一回面談に行き、そして年に一回家庭裁判所に報酬付与の申立をします。
 一方、お金がなく、ソーシャルワーカーさんなど周囲の協力で後見申立にたどり着けた人には、なかなか後見人が決まりません。
 裁判所には後見人候補者の名簿があり、書記官さんが電話で打診されますが、おそらくは病院が引き受けようとしない重症患者さんのように、色んな事務所に電話しては断られているのでしょう。

 つまり、成年後見は「福祉」の制度的側面が強いにも関わらず、その後見人となれる資格者は、それを「ビジネスチャンス」と考えているのだと思います。
 資格者の「先生方」はおっしゃるでしょう。「当然でしょ。慈善事業じゃないんだから」と。

 そうですね。確かに慈善事業ではない。ただ「慈善」の志なく社会的責務を負う仕事していいものなのか、と私は素直に思います。

今日も一日がんばります

 当事務所でも、交通事故でお怪我をなされた方から報酬を頂いて後遺障害を立証する業務を行っています。
 本人に過失がない交通事故では、自分がしていることの矛盾、つまり、過失なく事故に巻き込まれた人から報酬を頂戴して仕事をしていることの妥当性について、常に考えてしまいます。

 士業の仕事は、他のあらゆる仕事も同じですが、専門性を活かしてお客様と社会に役立った対価として報酬を頂くというのが原点のはず。
「社会に有用な存在でいる、い続けるというのはどういうことなのか」
 常にそれを自問しながら仕事に向き合っていきたいな、と、このニュースを読んで思いました。

 今日は朝5時からチャンピオンズリーグのテキスト速報を横目に御請求書作り。報酬「890円」って…と思いつつ、この値段で仕事を受ける自分も捨てたもんじゃない。
 トーレス、準決勝ではしっかり活躍してね(文句言ってたので出場停止回数増えたのかもしれないけど)!