約款から考えるAirbnbと保険

 Airbnbには「ホスト保証」と「ホスト補償保険」があるから保険は必要ない、他に保険をかけておかなくてもよい、という話しを耳にします。
 しかし、保険は約款が全て、約款をしっかり確認しないと、後でとんでもない目に遭う可能性があります。保険の支払については調査員が様々な調査を行うのが通例ですが、その調査員は「支払ってあげよう」という視点で調査を行うでしょうか。約款上「支払わない」と列挙しているケースに該当しないことをチェックしているのではないでしょうか。
だとすれば、約款を知っておくことは大きな意味があります。

 本稿では、約款に当たりながらAirbnbの保証及び補償の体系について考えます。

  • ホスト側は、法令を遵守していることがリスティングの条件となっている。
  • 保険適用は、サービス利用規約を遵守していることが条件となっている。
  • 無許可のゲストハウスには、保証制度は適用されない可能性が高い。
  • 無許可のゲストハウスで、住宅用火災保険が支払われる訳がない。

ゲストハウスの許可申請について詳しくはコチラから!

Airbnbが掲載している規約の場所

 Airbnbでは、分かりやすい形で各種規約を掲載していらっしゃいます。
 まずはその場所を確認しておきましょう。

サービス利用規約

ホスト保証の利用規約

 なお、ホスト補償保険については、制度概要を説明するPDFファイルに「約款は一般的な損害賠償責任保険の形式で書かれています。保証範囲と適用除外事項も、一般的な損害賠償責任保険の約款に沿うものです。」と書かれているのみで、約款そのものは掲載されていないようです。
Airbnbの約款を考える。

サービス利用規約

 サービス利用規約は、根本規則となるものです。当たり前のことですが、サービスを利用するにはこの規約に事前に同意しなければならず、遵守する必要があります。

本サイト、本アプリケーション又は本サービスの利用により、本サービスのユーザー登録の有無にかかわらず、お客様は、このサービス利用規約(以下「本規約」といいます)の諸条件を遵守し、法的に拘束されることに同意するものとします。

お客様が、本サイト、本アプリケーション若しくは本サービスを利用した場合、又は本アプリケーション若しくは本サービスを通じて、本サイトからコンテンツをダウンロードし、若しくは本サイトにコンテンツを投稿することで、お客様が本サイト及び本アプリケーションに登録しているか否かを問わず、お客様は、本規約を読了したこと、及び本規約に拘束され、私たちの本サービスを受けること(適用ある場合には、ホスト保証保険プログラム等のプログラムを含みます)について理解し、同意することを示すことになることを認め、同意します。お客様が本規約に同意しない場合、お客様は本サイト、本アプリケーション、本サービス、若しくは総コンテンツにアクセスし又はこれらを利用する一切の権利を有しないものとします。

「読んでいなかった」では済ましませんよ、ということを敢えて書いていらっしゃいます。英語の規約を日本語に和訳していらっしゃるものと思いますが「読了」という単語が規約に出てくるのも珍しいですね。

 さて、この規約を読み進めていきます。規約ですので全てが重要なのですが、本稿の論点として取り上げるのは次の箇所です。

お客様は、ご自身がリスティングに掲載した本宿泊施設並びにこれに対するゲストの予約及び滞在が下記の条件を満たすことを表明し、保証するものとします。

(i) お客様が第三者との間で締結した契約(住宅所有者組合、コンドミニアム、賃貸借に関する契約等)に一切違反しないこと、並びに、

(ii)(a)すべての適用法令(都市計画法、不動産の賃貸借に関する法令等)、税務上の要件、知的財産法及びお客様がリスティングに掲載した本宿泊施設に適用される規則及び規制(すべての必要な許認可、免許、登録等を備えていることを含みます)を遵守していること、及び、

(b)第三者の権利と抵触しないこと。

 当たり前のことですが、この規定は、特に民泊に幾つもの法律が関連する日本においては重要な意味を持つかも知れません。

 つまりAirbnbでリスティングを行うには、その前提として法令を遵守していることが求められるのであって、法令に違反しているリスティングはそもそも認められていない、ということになるのでしょう。

ホスト保証の約款

 では、次にホスト保証の約款を見てみましょう。

「保証対象宿泊施設」とは、本領域内に位置する居住可能な宿泊施設であって、(i) 当該宿泊施設に責任ゲストが滞在する期間、ホストが所有又は法的に支配権を有しており、かつ、(ii) Airbnbサービス利用規約に従ってホストが本サイトのリスティングに掲載し、当該責任ゲストが予約したものをいいます。

 ここでは、保証対象宿泊施設が、サービス利用規約に従っている建物であると定義しています。
 サービス利用規約では、すべての適用法令を遵守していることが要求されていますので、つまり、保証対象宿泊施設は、すべの適用法令を遵守していることが求められている、と読み替えることができます。

 さらに換言すれば、法令を守っていないホストの宿泊施設はそもそも保証の対象にならない、ということです。

 保険会社の調査員でれば、日本でゲストハウスをするには旅館業の許可が必要であることは知っているはず。ですので、許可を得ていない場合、損害が発生しても保証を受けられる可能性は低いと言わざるを得ないでしょう。

ホスト補償保険

 では、もう一つの補償制度であるホスト補償保険は、許可を得ていないゲストハウスであっても利用することができるでしょうか。

 ホスト補償保険については、約款自体が見当たりませんが、その性質は「損害賠償保険」とされています。ですので、第三者から損害賠償請求された場合にそれを肩代わりしてくれる保険ということになります。

 これについては、約款がないため詳細な検討はできませんが、サービス利用規約に違背しているホストはそもそも保護の対象にはならないと考えるのが妥当でしょうし、私見ではありますが、許可を得ていない場合、保険金請求はできないと解します。

保険は約款を読むことからはじまります

 インターネット上の記事には「Airbnbは保証制度が充実しているから安心」と言った内容のものも散見されます。
 しかし、これはあくまで「すべての」法令を遵守している場合に守られる制度であって、複数の規制に服する日本の場合、十分注意する必要があると言えるでしょう。
 そして、現行の制度で考えるなら、保証を受けるためにも許可を得ておくことが望ましい、ということは言うまでもありません。

 失火による延焼については、いわゆる「失火責任法」で保護され得るというのが原則的な考え方でしょうけれど、重過失の場合、賠償責任が発生する可能性もあります。
 この論点については改めて検討することに致します。