10月 17th, 2011|ブログ|

 国土交通省からの通達の取扱につき、役所でトラブルになったことがあります。

 国土交通省からの通達によれば「A及びB、C又はDが必要」と書かれている。

 この場合、本来、必要なものは、「A及びB」か「C」か「D」の三つのうちのどれか、ということになります。

 しかし、「C」を提出した私に、役所の吏員は「A」が足らないから必要な証明は交付できない、と言いました。私は、「B」は必要ないのか、というと、彼女は「必要ない」という。「A及びB」がパッケージになっていることの矛盾を指摘すると、上役の処へ行き、それでも交付できないと言い放ちました。

 書類は結局交付されるのですが、ここでのトラブルは本題ではありません。
 今日は、公用文の書き方、読み方に関するお話しです。

名詞を並列に用いる場合の公用文の書き方

 上記の通達を再度考えましょう。

「A及びB、C又はDが必要」

 「A及びB」はこれでひとくくりです。これを「甲」に置き換えます。すると、上記の通達は「甲、C又はDが必要」となります。
 このようにして見ると、必要な物は、甲、C、Dのいずれかであって、選択列挙の形式として記載されていることがよくわかります。

 では、この通達を例にして、ABCDの全てが必要であると記載すべき場合、どのような記載になるでしょう。
 この場合は「A、B、C及びD」となります。

「及び」と「又は」の併用

 今回、この国土交通省の通達で誤解を生じる原因となっているのが、「及び」と「又は」の併用です。
 役所の吏員が考えたプロセスを、数式で表すと次のようになると思われます

A+(B,C又はD)

 つまり、「A及び、BかCかD」と考えたのであろうと推測されます。これは一見、理にかなった考え方であるようにも思われますが、正確とは言えません。何故なら、及びは「名詞」を連結させるのであって、上の数式に当てはめた場合、及びが連結している後段は単純な名詞ではなく、文節になっています。上記の例では、及びが接続できるのはBのみとしか考える他なく、A及びBを一つのセットと考えるのが自然です。
 なお、及びの前後に「、」は使いません。

 通達では、集合列挙を表す「及び」と選択列挙を表す「又は」が同列に使われているため混乱が生じているように思えますが、原則に従って解釈すれば、A及びBをセットにした選択列挙(「A及びB」かCかD)であると言えるでしょう。

公用文の書き方

 単語を単純に並列的に並べる場合、接続語は最後にのみつけるのが正しい公用文の書き方です。そして、個数が増えるとそれに従い用例も変化します。ケーススタディで考えてみましょう。

「及び」を使う集合列挙の場合

  • (A+B)=A及びB
  • (A+B+C)=A、B及びC
  • (A+B)+C=A及びB並びにC
  • (A+B)+(C+D)=A及びB並びにC及びD
  • (A+B)+C+D=A及びB並びにC並びにD

 ここで大切なことは、カッコでくくる分類の方法です。この括弧は、階層を示しています。次の語群で当てはめていきましょう。

ジャズ・クラシック・JPOP・洋画・邦画・落語

 これらの名詞群を使って集合列挙を表記してみましょう。

  • ジャズ及びクラシック
  • ジャズ、クラシック及びJPOP
  • ジャズ及びJPOP並びに邦画
  • ジャズ及びクラシック並びに洋画及び邦画
  • ジャズ、クラシック及びJPOP並びに洋画及び邦画並びに落語

 つまり、同種のブロック(分類や階層とも言える)毎にくくり、同種のものは及びで、及びではつなげないものを「並びに」でつないでいくことになります。

「又は」を使う選択列挙の場合

  • (AorB)=A又はB
  • (AorBorC)=A、B又はC
  • (AorB)orC=A若しくはB又はC
  • (AorB)or(CorD)=A若しくはB又はC若しくはD
  • ((AorB)orC)orD=A若しくはB若しくはC又はD

 選択列挙の場合、一番小さな同種のブロックは「又は」で連結しますが、大きなブロックが出てくると、「又は」は大きなブロックで用い、小さなブロックには「若しくは」を用います。3階層になった場合、「又は」は一番大きなブロックでのみ用います(5番目の例)。
 上記の語群を用いて選択列挙を表記してみましょう。

  • ジャズ又はクラシック
  • ジャズ、クラシック又はJPOP
  • ジャズ若しくはJPOP又は邦画
  • ジャズ若しくはクラシック又は洋画若しくは邦画

「並びに」「若しくは」のルール

 「並びに」「若しくは」には、簡単なルールがあります。それは、
「及び」のない連結に「並びに」を使う余地はなく、「又は」のない連結に「若しくは」を使う余地はない
ということです。
ですので、たとえば会社目的を考える際に、
・不動産の売買、賃貸並びに管理
という一文があれば、これはそれだけ公用文としては適切でないことがわかります。
この場合は、
・不動産の売買、賃貸及び管理
が正しい記載となります。

民法中の使用例

 公用文でよく例示されるのは、民法第974条第3号ですが、この条文は、本来「又は」を使うべき処に「及び」を使っている誤った例として紹介されるケースもあります。この条文で「及び」「又は」のどちらを用いるかは難しい処ですが、及びが「and」、又はが「or」に対応して用いられることを考えると、「又は」が正しい使用法と言えるでしょう。

終わりに

 この国土交通省の通達は、誤って解釈されているケースも多く、自治体によっては、堂々と「A、B、C、D全てもってこい」と書いてあるケースもあります。通達の最後には「申請者に過度な負担をかけないよう」と記載されていて、ちょっと笑えたりします。
 公用文を解釈される際は、文法だけにとらわれず、くくられている名詞の性質を考えて判断されるとよいのではないでしょうか。

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