6月 7th, 2012|ブログ|

 人の死亡はどうやって証明するのでしょうか?
 今日は、特に相続登記にフォーカスした、人の死亡を証明するメソッドについてのお話しです。

 相続登記は人に頼まず自分で申請することが可能ですが、いくつかの難しい論点があり、この「人の死亡の証明」はその難論点の一つです。
 長くなりますので記事を2回に分けて検討します。

 なお、登記手続は行政書士の業務範囲ではなく、この記事内容は、自己の経験と知識の記述にしか過ぎません。本件で不明な点があれば、他の専門家に対してセカンドオピニオンを取るか、法務局の無料相談をご利用なさってください。

ポイント
・相続登記においては、死亡の事実を証する戸籍類と、死亡した人の住所を明らかにする住民票の除票か戸籍の(除)附票が必要となる。
・相続登記手続において、まず一番最初にチェックすべきは、死亡した人の最後の住所と登記記録上の住所が一致しているかどうかである。

1.自然人の死亡を証する書面とその証明能力

 自然人が死亡した際、手続においてその死亡を証する書面が必要となる場合があります。
 通常、その書面としては、その人の死亡事実が記載された戸籍(除籍)謄(抄)本が用いられます。
 では、戸籍に死亡事実を記載するためには、役所は何を確認するのでしょうか。
 それは、戸籍法に規定されています。

第八十六条  死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
○2  届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。
一  死亡の年月日時分及び場所
二  その他法務省令で定める事項
○3  やむを得ない事由によつて診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない。  

 つまり、原則として死亡診断書か検案書が必要となり、死亡届はこれらいずれかの書類と一体になっています。

 つまり、死亡を確認する医師なりがその責任において診断書を記載し、それに基づいて親族等からの申請がなされ、それを役所が確認の上受理して戸籍に記載されるわけですから、死亡を証する書面としては十分な能力がある、と言う論理になります。

 ちなみに、戸籍の能力はどのようなものなのでしょうか。一般的には、戸籍には「公信力」はないと解されています。私なりの言葉で換言すると「強い推定は働くけれど、完全な証明力はない」と言うことになります。これは、死亡に限らず戸籍一般に関する能力と考えられています。

2.戸籍と人をつなげる『住民票』

 戸籍によって人の死亡を確認するわけですが、今の世の中の仕組みでは、戸籍だけでは人の死亡を確認しづらくなっています。
 たとえば、生活の中で色んな書類を記入することがあります。その際、本籍地を記載することがどれくらいあるでしょう?
 民間に提出する書類には、ほとんどないはずです。記載するのは住所、氏名、生年月日。
 つまり、自然人を特定する情報としては、現在、住所氏名と生年月日を用いることが普通です。
 ところが、戸籍には氏名と生年月日しか記載されていません。住所がわからない。これを実例で考えます。

 たとえば北海道A市B町1番地に住む山田太郎さん(昭和22年2月22日生)が死亡したとします。
 手続で必要となり戸籍を取り寄せると本籍地は大阪府になっていました。

 戸籍から分かるのは、本籍地大阪府の山田太郎さん(昭和22年2月22日生)が死亡したことだけです。

 手続を行う側からは、こう考えることができます。

「もしかしたら、北海道に住んでいる山田さんはまだ存命なのに、氏名と生年月日が同一である大阪の山田さんの戸籍を利用して勝手に手続をしようとしているんじゃないか」

 このような疑念を払拭するために、実務では「住民票の除票」を添付して、戸籍に記載されている死亡人物が、手続の対象者(被相続人)と同一人物であることを訴えます。
 住民票の写しは死亡した人に関しては「除票」として5年間保存されます。普通の住民票と同じように本籍地を記載させることができるので、この除票を提出することによって、「北海道A市B町1番地に住む山田太郎さん(昭和22年2月22日生)が亡くなった」ことが分かる訳です。

 このように書くと、「本籍地・住所・氏名・生年月日が記載されている住民票の除票を持っていけば戸籍は要らないのではないか?」とも考えられますが、実務ではあくまで戸籍によって人の死亡を確認し、住民票で住所をつなげると言う考え方が採られていますので、戸籍は必須となります。

 長くなったのでまとめます。

  • 人の死亡は戸籍(除籍)で証明する。
  • 実際の手続においては、戸籍に記載されている人と手続対象者(被相続人)をつなげるため、住民票の除票を添付する。

3.転居等での問題点

 では、転居を繰り返していた場合はどうすればいいのでしょうか。事例で考えます。

 不動産を買って登記を受けた名義人が死亡しました。本籍地北海道で京都府に住んでいた山田太郎さんは大阪府に不動産を買いましたが、決済時はまだ京都に住民票があったので、登記には京都の住民票を使いました。
 ですので、登記の名義人は「京都府 山田太郎」で記載されています。
 その後、山田さんは購入した不動産に移り住み、住民票を大阪府に移しましたが転勤で愛知→東京と住民票を移し、東京都で亡くなりました。

 この事例では、戸籍から「北海道の山田さん」が死亡したことが分かります。また、住民票の除票からは「東京都の山田さん」が死亡したことが分かります。

 ところが、登記の名義人は「京都府の山田さん」ですから、これらの書類では「京都の山田さん」が他界したことを証明することはできません。

 この場合、二つの方法で書類を補完します。

1.戸籍の(除)附票の写しを取り寄せる

 本籍地を動かしていない場合、戸籍の附票の写しには、その人の住所の履歴が全て記載されています。ですので、京都から東京までの住所の履歴を全て確認することができます。
 なお、戸籍附票も改製されるケースがありますが、改製前の附票の保存期間は5年間です。

2.住民票の除票を取り寄せる

 前述のとおり、住民票の除票の保存期間は5年です。ですので、もし、死亡前5年間の間に京都→大阪→愛知→東京と住所を移していたならば、全ての除票を取り寄せることができます。逆に、住所移転後5年経っていれば住民票の除票を取り寄せることはできません。

4.ここまでのまとめ

  • 人の死亡は戸籍で証明する。
  • 戸籍記載にあたっては、医師の診断書等が添付され、戸籍には強い推定は働くが公信力まではないと解されている。
  • 実務上、人の死亡を確認するためには、戸籍以外に被相続人の住所を確認できる公的資料が必要となる。
  • その公的資料としては、住民票の除票と戸籍の附票が挙げられる。
  • 登記手続においては、登記名義を受けた時の住所と死亡時の住所が異なってる場合、その人の住所の変遷を証明するための資料を添付する必要がある。
  • その資料としては、戸籍の附票と、住民登録をした各場所での住民票除票を全て集めたもの、が挙げられる。
  • 除票、除附票には保存期間5年の制限がある。

保存期間を経過していて住所の連絡を証することができない場合はどうするか?

 これが次回「相続登記時における不在住・不在籍証明について(その2)」のトピックです。

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