4月 3rd, 2012|ブログ|

 最近、検索で「受理 受領」と言うキーワードが見受けられます。
 このブログでも戸籍届出関連のテーマを取扱いながら、この相違に踏み込んだ記事はありませんでしたので、それについて検討してみます。

<ポイント>
・行政手続において、「申請」行為は受領によって審査が開始され、「受理」という概念は存在しない。
・行政手続において、「届出」行為は、届出行為が形式的要件を満たしていれば、手続上の義務は履行したものとされる。
・戸籍法には「受理」という概念が用いられており、「不受理」の場合の証明書を請求することができる。

1.戸籍届出の風景

 まず、イメージを設定して話しを進めていきましょう。この度、私と松田せいこさんが婚姻届をもって役所に出向きました。
 ここで、それが役所の開庁時間中であった場合、役所内の担当部署に婚姻届を提出します。役所が土日や時間外であっても、宿直係さんに受け付けてもらうことができます(詳しくは、「戸籍の届出は慎重に!」に記載しています)。
 さて、この両者、すなわち担当部署に提出する行為と、宿直係さんに提出する行為は、違いがあるのでしょうか?

 違いはありません。この一連の行為は、役所側から見れば、「届出書の受領」です。受け取った人間が、誰であってもここは変わりません。

2.受領とは

 戸籍事務における手続きで概念される「受領」とは、その書類(或いは行為)を受け取る事実行為であって、それ以上の意味はありません。役所の開庁時間中であったとしても、窓口で書類を渡す時点で「書類が受理された」訳ではないのです。

3.受理とは

 では、「受理」とはどのような意味をもつのでしょうか。行政手続において、「受理」と言う概念は必ずしも明確ではありません。行政手続法においても、「受理」と言う文言は一回も使われていません。
 これは、行政庁の取扱基準を明確にするため、申請は到達すれば審査を開始しなければならないこととし(行政手続法第7条要約)、「受理」の概念を排除したからである、と説明されることがあります。つまり、一般の行政手続においては、「受領」=「審査の開始」となります。

 「受理」とは、主に戸籍法や裁判手続で使われる概念です。私は、その意味を「処理を開始する旨の決定」と解しています。
 書類は、それを受け取ってすぐには、事務処理を進めることはできません。書き漏れがないか、誤記がないかなどの形式的なチェック、法が定めた要件を満たしているかどうかの実質的チェックを経て、はじめて届出(申請)に基づく各種の処理を行うことができます。

 最初の例で考えると、私のフィアンセである松田せいこさんが15歳であったり、既にヒロミゴウさんと結婚していたり、あいにく離婚後6ヶ月を経過しておらず、その間に出産もしていなかった場合などは、法律の定める婚姻の要件を満たしておらず、婚姻届を受け付ける訳にはいきません。
 その場合、役所は婚姻届を受領したが、受理にあたり要件を審査したところ、不適格であることが判明したので不受理という処分を行うことになるのです。
 逆に、障害事由がなければそれは受理され、受領時に遡って効力を生じることになります。元旦に婚姻届を出して、元日付けで婚姻の記載がされるのは、この遡及効によるものです。

 また、最初の例で、開庁時に役所に登庁したのであれば、受領から受理決定までは一連で行われますが、閉庁中に、宿直吏員が受領した場合、そこで受理決定が行われることはなく、直近の開庁日において速やかに受理決定のための審査が行われることになります。

 なお、行政手続において「受理」が概念されていないにもかかわらず、戸籍事務において「受理」手続が存在しているのは、私の理解では、単純に行政手続の特則の一つである、と理解しています(根拠は確認していません)。

4.行政手続における実際

 行政手続法自体に「受理」の概念はありませんが、実際の現場における事務のやりとりはどうでしょうか。
 申請者が登庁して申請書を提出した時点で担当者が書類を確認します(審査が開始される、と言えるでしょう)。その後、補正箇所が見つかり補正を行うことになりました。さて、申請書類はどちらの手元へ渡るでしょう?
 行政手続法が「受理」を排除した枠組みから考えるなら、申請書は行政庁が保管すべきはずです。行政手続法第7条の「相当の期間を定めて補正を求め…なければならない」(行政手続法第7条抜粋)もその根拠となりえます。
 申請書が行政庁にあってこそ期間を定める意味があるのであって、申請書を持ち帰ってしまえばそのまま申請を止めてしまうことも考えられるため、「相当の期間を定める」必要はない訳です。
 つまり、審査される側から読みとると、この「相当の期間を定めて補正を求めなければならない」とは、「書類は行政庁が保管していなければならない」ことを前提にしていると解釈できるのです。

 ところが、実際の現場においては、書類を持ち帰って再度全てを出し直すことが多々あります。
 これは、審査する立場からは「行政指導」としてそのように指示されているのでしょうか…。
 確かに、補正箇所があまりに多い場合、申請対象となっている許認可等を拒否しなければならない可能性もあるため、持ち帰ることが申請者のためになることもあるでしょう。
 しかし、「全ての書類が揃わないと受理できない」と言われる担当者がいらっしゃることも事実です。これは、多くの申請者が経験されていることではないでしょうか。
 ですので、行政手続法において「受理」の概念は排除されたとはいえ、実際の手続において「受理」を前提とした事務が行われていることも多い、と私は感じています。

5.戸籍における受理後の手続

 では、最後に、戸籍手続における受理後の手続についてです。
 戸籍受理が決定されると、その届出は受付帳に記載され(戸籍法施行規則第20条)、その後に戸籍に記録されることになります。
 開庁中は即日中に受理するかどうかの処分を行うことになりますが、過去には、出生届における新生児の名前に使われる漢字について、問い合わせのために受理処分が即日なされないこともあったようです。

6.まとめ

 戸籍届出や行政庁への申請行為は、日常生活に深く関わるものではありません。しかし、生活自体は行政サービスとは不可欠で、我々は人生の大きなイベントの際に、ほとんど必ず役所と関わっていることも事実です。
 そんな時、自分のしようしていることの意味や進行状況を理解している、ということは、私は現代人に取って大切なことではないかと思います。

 ご参考になさって下さい。

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