5月 24th, 2012|ブログ|

 今日は、危険運転致死傷罪についてのお話しです。
 京都では、4月に重大な交通事故が続けて発生しました。最近、雑談などの中で、危険運転致死傷罪について尋ねられることがあります。
 危険運転致死傷罪は刑法に定められており、行政書士業務とは直接関係ありませんが、その具体的内容について知っている方も少ないため、自分の理解している知識を整理する意味も込めて出稿します。

<ポイント>
・危険運転致死傷罪は、いわゆる原付や自動二輪にも適用がある。
・危険運転致死傷罪は、運転行為を類型にして定めている。

1.根拠法令

 危険運転致死傷罪は、『刑法第27章「傷害の罪」』に定められています。

(危険運転致死傷)
第208条の2  アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。
2  人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。

2.制定の経緯

 まず、自動車の運転は、それが旅行時であっても、レジャーであっても、「業務」とされます。この場合の「業務」とは「仕事」という意味ではなく、『人が生活するうえで、反復的な社会活動や行動で生命や身体に危険を生じ得るもの』(最判昭和33年4月18日の筆者意訳)のことを意味します。
 ですので、一昔前は、自動車事故には「業務上過失致死傷罪」が適用されていました。

 しかし、業務上過失致死傷罪の法定刑は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」です。一方、窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と、懲役刑については、窃盗罪の方が重く定められていました。

 交通事故の増加に伴い、悪質な事故の件数も増える中、被害者遺族からは、この法定刑に疑問の声が出る結果となり、危険運転致死傷罪が定められたと言う経緯があります。

 なお、危険運転致死傷罪が定められた後、業務上過失致死傷罪に自動車運転致死傷罪が加えられました。自動車事故において、危険運転致死傷罪が適用されない場合は、業務上過失致死傷罪が適用されていたため、危険運転致死傷罪の構成要件に該当しない交通犯罪に適用するために定められたもので、法定刑が5年から7年に加重されています。

3.危険運転致死傷罪の検討

 では、危険運転致死傷罪を具体的に検討してみましょう。前述の条文を見ると、幾つかの類型を定めていますので、それを整理してみます。
 まず、山口県警のホームページに分かりやすいビジュアル解説がありますのでリンクを掲載しておきます。
 危険運転致死傷罪 – 山口県警のホームページ

1.飲酒薬物運転

 条文では、まず『アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ』た場合を定めています。

2.制御困難な運転・未熟者の運転

 第2の類型としては、『その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ』た場合を定めています。
 「運転する技能を有しない」というのは、無免許運転を指すわけではありません。無免許であっても反復継続して運転し、技能があったと認められる場合は、無免許というだけでは危険運転致死傷罪は適用されないことになります。
 この当たり、法の論理も分からなくはないのですが、被害者や一般の常識とはかけ離れた解釈とも言えるでしょうか。

3.妨害運転

 第2項では、3番目の類型として、『人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し』た場合を定めています。

4.信号無視運転

 最後に、第4番目の類型として、『赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し』た場合が定められています。
 「殊更に無視し」と記載されていますので、黄色信号で進入して赤信号に変わった場合、信号無視運転には当たらないと解されています。

 以上の4つの類型に該当する運転によって、人を死傷させた場合、危険運転致死罪で裁かれる可能性があり、その法定刑は、傷害で15年以下の懲役、死亡の場合は1年以上の有期懲役となっています。
 これは、逆から見れば、以上の4類型に該当しない場合、危険運転致死傷を適用できない、と言うことになります。

4.『刑法第208条の2』の現在

 2012年5月24日現在、この刑法第208条の2はどのような意味を持ち、どのように評価されるのでしょうか。
 それは、法曹関係者だけの問題ではなく、我々国民の意識の問題と言えます。何故なら、日本の立法府は国会であり、国会に所属する議員を選ぶ事ができるのは、有権者である国民だからです。

 これは、完全な私個人の私見ですが、現在の刑法は、加害者の故意過失や態様によって整備運用がなされています。
 しかし、居眠りは故意ではないからと言って、何物にも代えることのできない多くの人名を奪っても最高懲役が(単独では)7年であること。これには違和感を覚えざるを得ません。
 重大な結果を引き起こしたのであれば、故意にであったか過失があったかに関わらず、それに対してしっかりとした法的、社会的責任を問うことのできる刑法制度を作っていくことは大切なのではないかと思います。

5.まとめにかえて

 居眠り運転の場合、被害者に保険が支払われるか、と言うこともよく尋ねられます。加害者が任意保険に入っていた場合、任意保険から被害者に支払われます。これは、居眠りであっても飲酒であっても差はありません。保険の目的は被害者の救済だからです。

 自動車事故件数は減少傾向にありますが、どのような類型の犯罪であったとしても、前述のように、加害者だけに注目するのではなく、引き起こした結果に対する責任を負う仕組みは考えていくべきではないでしょうか。

 何はともあれ安全運転第一。飲んだら絶対に乗らない。スピードを出しすぎない。そして、眠くなったら休憩するなど、ドライブマナーの向上を心がけたいものです。

最後までお読み頂いてありがとうございます。
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