自動車保有者の事故に対する責任

<重要な注意>
 このブログでは、行政書士が業務や法律、京都・パソコンのこと等について綴っています。行政書士は、業務範囲が行政書士法に定められており、業務以外に記事については、それがどの分野に関するものであっても、一私人として知っている知識をまとめて記述したものでしかありません。
法律問題における紛争解決は、法律で例外が定められていない限り、弁護士の専門分野であり、具体的な事案について検討される場合、このようなブログ記事を参考にするのではなく、法テラスや、弁護士会や役所等で開催されている無料法律相談を受けられることを強くお勧めします。

今日は、自動車事故が起こった場合、自動車保有者として負う可能性のある責任についてのお話しです。

<ポイント>
・自動車事故が起こった際に、その自動車所有者の責任は、自賠責法第3条に定められている。
・他にも一般不法行為責任として、民法第709条による不法行為責任を追及される可能性もありえる。

1.はじめに

 京都府では、近時立て続けに大きな交通事故が発生しています。あまりのことで、言葉も見つかりません。
 事故が発生した道路は、いずれもよく使う道でしたので、人ごととは感じられません。自分の運転マナーについても反省すべき点があり、一つ間違えば自動車が凶器になることを肝に銘じて運転しなければならないと感じました。

 私はただの行政書士ですが、こんな時、多くの人が私に「自動車を持っていた人、貸した人の責任はどうなるの?」と尋ねます。自賠責法は行政書士の業務に関連する法規ですが、この記事は、そんなこととは別に、自動車を所有する人間が、法律上どのような責任を負うのかは、所有者であれば当然知っておくべきなんだろう、と言う思いから出稿しています。

2.自動車所有者が事故に対して負う可能性のある責任

 自動車事故による損害賠償については、自動車損害賠償保障法(以下、「自賠責法」と言います。)と言う法律に詳しく定められています。賠償責任については、その中の、『第2章 自動車損害賠償責任』に定められています。

(自動車損害賠償責任)
第3条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
(民法の適用)
第4条 自己のために自動車を運行の用に供する者の損害賠償の責任については、前条の規定によるほか、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による。

 この第3条と第4条の主語は、「自己のために自動車を運行の用に供する者」となっています。この一文を見れば、自分の車を他人が運転して事故を起こしても自分は責任を負わないようにも読めます。しかし、最高裁によるとこの「自己のために自動車を運行の用に供する者」(以下、「運行供用者」と言います。)とは、「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用によって享受する利益が自己に属する者」(最判昭和43年9月24日)であるとしています。

3.「運行供用者」の定義

 自賠責法の「運行供用者」の概念だけでなく、前述の最高裁の定義も、一般には理解しづらい文章です。
 最高裁の定義を「自動車使用の支配権を有している」+「使用の利益が自分に帰属する」の二つの要件に分別して具体的事案で考えましょう。

1.自分の車を運転して自分が事故を起こした。
「使用支配権を有しているのは→自分」+「使用の利益が帰属するのは→自分」=自分が運行供用者として責任を負う可能性がある
2.会社の車を運転して自分が事故を起こした。
「使用支配権を有しているのは→会社」+「使用の利益が帰属するのは→会社」=会社が運行供用者として責任を負う可能性がある
3.夫の車を運転して妻が別の男性に内緒で会いに行く途中に事故を起こした。
「使用支配権を有しているのは→夫」+「使用の利益が帰属するのは→??」=???
4.レンタカーを運転して自分が事故を起こした。
「使用支配権を有しているのは→レンタカー屋」+「使用の利益が帰属するのは→レンタカー屋」=レンタカー屋が運行供用者として責任を負う可能性がある
5.友達の車を運転(無料で貸してもらった)して自分が事故を起こした。
「使用支配権を有しているのは→友達」+「使用の利益が帰属するのは→自分??」=運行供用者責任は発生しない???

 このように考えていくと、「支配権」と「利益の帰属」だけでは判断が難しいことがよくわかります。従って、判例や裁判例も多く、その中で事案毎に判断がなされています。

 ここまでで、明らかになる結論が一つあります。それは、
自分が所有している車が事故を起こせば、事故の理由や状況にかかわらず、場合によっては責任を負う可能性がある。
と言うことです。盗難にあったとしても、鍵をかけ忘れてた等、事情によっては責任を負う可能性があります。ですので、自動車は、しっかり管理しなければならないし、安易に他人に貸すべきではない、と言えます。
 また、安易に借りるべきではない、とも言えるでしょう。

 なお、私の知る限りにおいては、上述の「3」や「5」のケースであっても、所有者に運行供用者責任が認められる傾向にあります。

4.民法上の責任

運行供用者は、自賠責法第3条による他、民法の規定により不法行為責任を追求される可能性もあります。

5.まとめ

 京都は小さい街ですので、たとえば京都駅以北の中心部であれば、自転車での移動も十分可能です。
 できるだけ車を使わない、細い道ではゆっくり走る、と言ったことに留意する必要があるでしょうし、行政サイドは、通学時間の通行制限を厳格にし、子ども達が安全に通れる道路の仕組みを作ることも重要でしょう。
 学校においては、通学路の再検討を行うなど、それぞれが出来ることをやって、誰もが安全に通れる道路にしていかなければなりませんね。