1月 30th, 2012|ブログ|

 今日は、『署名または記名押印』なる記載についての検討です。

<ポイント>
・『署名または記名押印』と記載されている場合、署名すればハンコを押す必要はない。
・署名や記名押印については、それが何のために必要で、自分にどのように影響してくるかを考えるとよい。

<前提知識>
・『署名』とは、自己の氏名を自分で書き記すこと、と言える。
・『記名』とは、自己の氏名をそれ以外の方法で表示すること、と言える。つまり、他人に書いてもらった名前は「記名」であるし、ワープロで出力した自己の氏名も「記名」となる。

1.『署名または記名押印』の歴史

 言うまでもなく、ハンコは日本人にとっては欠かすことのできない道具です。日常生活の様々な局面でも、ハンコが必要となります。
 ところで、契約書などの末尾には、「署名または記名押印するものとする。」などと記載されていることがありますが、これは一体どういう意味でしょうか?
 実は、これに類する言葉が出てくる法律がありました。『商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律』という、既に廃止になった法律で、内容は次の一文のみです。

商法中署名スヘキ場合ニ於テハ記名捺印ヲ以テ署名ニ代フルコトヲ得

 旧商法では、議事録について署名を要求していたことからこの法律が制定に至ったものと推測されますが、その経緯についてはウィキペディアに非常に詳しく記載されていますので、ご一読されるとよろしかろうと思います。

 『署名又は記名押印(捺印)』と言う文言が使われだしたのは、この法律による処が大きいのではないかと私は考えています。

2.署名の実際

 しかし、実際には署名しても、末尾にハンコを押すことが一般的でした。署名や押印を行うのは、文書の証拠能力を高めるためですので、より強力であることに越したことはありません。この『署名+押印』は、法律の定めとは別の、実務的な必要性において一般化していると言えるでしょう。
 ですので、『署名または記名押印』と書かれている場合でも、署名末尾に印鑑を押すケースが圧倒的です。しかし、厳密に考えると「署名しているから」と言って押印を拒否することは可能でしょう。

3.行政手続きにおける署名と記名押印

 私法上の契約においては、上記のように署名と押印をもらっておくと言うことは、契約において大きな意味を持ちます。しかし、実際には不要と思える局面でも「署名又は記名押印」が必要とされていました。その代表的な例が、不動産の登記簿(現在の登記記録)を請求する際の申請用紙です。誰でもが簡単に請求できる土地や建物の謄本をとる際にも、昔は署名または記名押印が要求されていました。これは、申請人に過度な負担を要求しているとも言えます。
 そこで、政府は、平成9年に「申請負担軽減対策」を閣議決定し、押印のあり方が見直されることになりました。
 具体的には、次のような指針が示され、各省庁がそれに沿った形で見直しを進めています。

・記名押印を求めている場合:押印を求める必要性や実質的意義が乏しく、押印を廃止しても支障のないものは廃止し、記名のみでよいこととする。また、それ以外の文章についても、「記名押印または署名」の選択制にし、押印の義務づけを廃止することとする。
・署名に押印をも求めている場合:原則として押印を廃止し、署名のみでよいこととする。

4.まとめ

 署名や記名押印は、その書類をよく理解した上で行うのが一番です。契約の際などは、自分のためにも署名押印しておいた方が良いケースもありますが、それ以外で納得がいかない場合は、「何故印鑑がいるのですか?」と確認してもよいのではないかと私は思います。

 ご参考になさってください。

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