「成年後見」とは、一体どんな制度でしょうか?
一般の方にはあまりなじみない言葉ですが、超高齢化社会を迎える今後においては、ますます重要になる制度と言えます。

「成年後見」とは、ごく簡単に申し上げますと、20歳以上の成年者で判断力が十分でなくなった方々が法律行為を行う場合に、その方々が不測の損害を被ることがないよう、法的にサポートするための制度で、民法及び関連法案によって規定されています。

独り暮らしのお年寄りをねらった訪問販売での高額商品の売りつけや点検、検査を装った契約締結の事例は未だに後を絶ちません。このような場合、訪問販売法で保護できるケースもありますが、同法では期間の制約があるため、相談できるよりどころのない方が期間経過後に契約解除をしようとしてもできないケースが多くみられます。
このようなケースにおいて、成年後見の制度を利用すればより強力に保護をすることが可能となります。

成年後見の制度概要

成年後見には、後見・保佐・補助の三種類があり、制度利用が必要な方がどの類型の制度を利用するかどうかは、本人、申立人の意向だけではなく、簡易診断、鑑定などの専門家判断をふまえた上で、家庭裁判所が審判します。

最も保護が必要な方、つまり常に意思能力がほとんどない状態の方は被後見人として、成年後見人が付されます。成年後見人は一人である必要はなく、身上看護と財産後見のため、複数の後見人が付されるケースもあります。また、社会福祉法人などの法人が後見人になることも法的に認められています。成年被後見人(審判を受けた本人)は単独で有効な法律行為を行うことはできず、その行為は本人も成年被後見人も取り消すことができます。

後見までは該当しないけれど、意思能力が十分でない場合、保佐として、被保佐人が選任されます。保佐の制度は、意思能力は不十分ながらもあるということを前提としているので、行った法律行為は原則有効とされます。但し、単独で行えば不測の損害を被るおそれのある重要な法律行為については、保佐人の同意を得て行う必要があり、同意を得ずに行った行為については、本人及び代理人が取り消すことができます。「重要な法律行為」は民法に列挙されており、その他にも「これは」と思える行為について同意権の付与を申し立てることもできます。また、原則、保佐人には代理権はありませんが、代理権付与の申し立てを行い、特定の行為について本人を代理して行うこともできます。

補助とは、成年後見制度の中では本人の意思能力が最もしっかりしており、部分的なサポートのみで足りる場合に審判され、本人のために被補助人が選任され、本人を補助します。補助開始の申立を行うには、併せて同意権又は代理権付与の申立をあわせて行う必要があり、認められる同意権は保佐人がもつ同意権限の範囲内に限られます。

どのように制度を活用するのでしょうか?

上記の独居老人の例で考ると、後見や、保佐に5万円以上の対価を支払う契約の締結には保佐人の同意を要する旨の同意権拡張の申立を行っておけば、同意なき契約として契約を取り消すこが可能となり、その取消期間は大幅に伸長されます。成年後見制度により選任された人は大抵月1回以上は本人を訪問するなどして近況を知ることができますので、制度の利用は強力な救済手段となり得るでしょう。
近時はケアマネージャーなど、福祉関連の方から利用者さんの制度利用についてご相談を受けることも多くなっておりますし、遺産分割のために申立を考えられるケースもあります。制度自体が社会に定着し、その重要性を増していると言えるでしょう。

成年後見制度では、誰が後見人等に選任されるかやかかる費用について不安になられることがあるかも知れません。選任権限は家庭裁判所が有していますが、申立時に候補者を立てることが可能ですので、申立に争いがなく家族で協力して本人をサポートできる場合は家族を候補者として推挙し、そのまま選任されるケースが多数です。一方、候補者を立てて申立を行っても、家族間で争いがある場合や家裁が適当でないと判断した場合は、別人が選任されるケースもあります。その時は、候補者を立てない場合と同様に、家庭裁判所が持っている推薦人名簿から専門家が選任されることになります。
後見人等の報酬についてですが、専門家などが選任された場合は、要保護者の財産等を考慮して家庭裁判所が報酬を決定しますが、親族が選任されている場合は原則無報酬となっているようです。
制度のイメージ上、留意を要する事柄もあります。後見と言うと、毎日家に来てもらってお世話をしてもらうというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかも知れませんが、成年後見制度はあくまで法的なサポートを目的とした制度です。専門家が選任された場合、サポートはあくまで部分的なものであって、日常生活全般を支援できる訳ではありません。心優しいケアマネージャーさんが、利用者さんのために職域を越えて支援されるケースがあったとして、その一環として成年後見制度の活用を考えられる場合でも、後見人等ができるのは審判で定められた事項ないのことに限られ、買い物の手伝いや家の掃除などは、分野外となります。

また、近時では、「見守り契約」と言う種類の新しいサポートの形も生まれつつあります。これは、任意後見契約を締結することなく、直接要保護者と世話人の間で契約を締結するものです。内容は定期訪問、財産管理や死後の処理等に及ぶこともあります。要保護者と世話人が個人的に契約するため、家庭裁判所の監督権は及びません。要保護者が契約を締結するに当たっては、契約内容をよくよく理解した上、セカンドオピニオンを求められるなど、慎重に対応する必要があると考えます。

成年後見制度の利用について、家庭裁判所へ代理で申請できる資格者は弁護士のみです。
しかし、財産がない場合、弁護士費用の拠出に苦慮するケースがあり、当職へご相談される場合もそのような事例が多数です。
申請については家庭裁判所の相談コーナーを利用することができますし、必要書類の中には、障害者手帳など、行政庁から発行されているものもあり、行政書士も弁護士法に抵触しない範囲でサポートすることが可能です。

ご不明な点などがございましたらお気軽にお問い合わせ下さいませ。