本稿は旧条例に基づく解説です、現在、京都の簡易宿所では浴槽がなくともシャワー設備で対応が可能な事例が増えております。詳しくは京都市医療衛生センターにお問い合わせなさるのが確実です。
ありがたいことに、ひっきりなしに民泊に関するご相談を頂いております。
しかし、先週頂いた相談の約4割が「お風呂なし」の物件に関する簡易宿所許可申請の打診でした。
都市伝説でもあるのか「近くに浴場があればいいんでしょ?」とご相談を頂きます。
しかし、それほど簡単ではありません。今日は、京都市で簡易宿所許可申請をする場合の「お風呂」の取り扱いに関して検討します。
- 簡易宿所申請では、公衆浴場が使える場合がある。
- 不明な場合は、専門家に相談なさるとよいでしょう。
根拠条文
まずは「入浴設備が要らない」という根拠についてあたっていきましょう。根拠法令は旅館業法施行令となります。
第一条(第3項)
…略…
3 法第三条第二項 の規定による簡易宿所営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。
…略…
四 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること。
…以下省略…
このように、条文には、「当該施設に近接して」「公衆浴場」がある等入浴に支障をきたさないと「認められる場合を除き」入浴設備が必要であると規定しています。
以下、これらの要件を検討していきます。
「当該施設に近接して」の意味
京都市において「当該施設に近接して」とは、簡単に言うと、簡易宿所を行う建物敷地の角から半径250m以内の距離を言います。
通常、敷地は少なくとも四角形以上になりますので、それぞれの角から計測します。また場合によっては、角ではなく敷地境界線上から計測する場合もあり得ます。
「公衆浴場」の意味
公衆浴場とは、公衆浴場法に定める公衆浴場のことですが、ここでは主に「一般公衆浴場」を指すものと解します(私見)。
一度、「向かいにあるスポーツクラブの浴場を使えないか」というご相談を受けたことがあります。その相談は回答不要となったため調べてはいませんが、会員制のスポーツクラブの浴場を簡易宿所の入浴設備に代替させることはできないと解するのは自然でしょう。
次に、京都市では「2箇所の」公衆浴場が必要となります。つまり「建物から半径250m以内に二つの公衆浴場が必要となる」ということです。
そして、その公衆浴場の一つが廃業した場合、入浴設備が必要となってきます。
先ほどのスポーツクラブのご相談は、半径250m以内にもう一つの公衆浴場がなかったために土俵に乗らなかった、ということです。
「認められる場合を除き」の意味
さて、浴場というと、普通の銭湯でも大きな敷地です。ですので、250m以内に公衆浴場の一部が入るけれど、範囲外の部分もある、という究極の場合が実際に出てくることになります。
こういった場合、勝手に判断することなく、保健センターに相談しましょう。「認められる」かどうかは、認める側が判断します。敷地の全部が入っているかどうかなどといった点まで細かく定めた規定は恐らくないでしょう。物件に応じて相談する必要があります。
入浴設備の問題は簡単ではありません
町家風の家にお風呂があったとしても、それは建築時からあったものではなく、増築されたものの方が多いと言えます。後から増築されたものである場合、消防との協議で検討しなければならないケースも少なくありません。
物件の選択は慎重に、できれば事前に専門家の助言を受けながら進めていくことが大切という気はします。
ご参考になさってください。
なお、実際の申請では、公衆浴場を使う場合は比率的にかなり少数で、公衆浴場を使う場合であってもシャワー設備の設置は求められます。