住宅宿泊事業法、戦いの記録はじめます。

 ここでやりたくなかったんですが、書き始めます、住宅宿泊事業法について。

 2018年3月15日から事前受付が始まり、6月15日から運用が始まった住宅宿泊事業法、いわゆる「民泊新法」ですが、京都では、現在届出書類を受け取ってもらって現地調査までに3週間、現地調査から番号通知まで3週間の合計6週間がかかっています。
 つまり、届出書類を渡してから開業までが6週間。あれ、おかしくないですか?

(届出)
第四条 法第三条第一項の届出は、住宅宿泊事業を開始しようとする日の前日までに、第一号様式による届出書を提出して行うものとする。

 住宅宿泊事業法施行規則では「届出は事業開始しようとする日の前日までに届出書を提出して行う」ものとする、となっているのに6週間待ち?
 しかもそれが当然のように対応している…。これっておかしいと思うのは自分だけなのでしょうか。

 今まで窓口で散々な対応をされました。
・窓口担当者が指定した期日までに連絡がない。
・窓口対応者の言うことが二転三転する。
・保留中に電話切られても折り返しもない。1分後にこちらから折り返したら「もうその担当者はいない」と言われる。
・電話での保留の待ち時間は3分は覚悟の状態。
・窓口で25分待たされても「お待たせ致しました」とも言われない。
・強制できないことを強制できるような口ぶりで言う(普通は分からないでしょう)。

 電話応対や接遇態度については個人差もあるのでどうしたらいいというのは書くつもりはありません。
 しかし、実務的な論点については、問題になっていることを共有するのは大切ではないかと思い始めました。自分一人では変えることができなくても多数が賛同してくだされば対応が良くなっていくかもしれない。或いは自分の対応や考えが間違っていることに対する指摘があれば、自分も顧みることができる。

 ですので、京都市における住宅宿泊事業法の窓口対応について疑問に思ったこと、共有すべきと考えた事柄についてはこのブログでご紹介していくことにします。

 さて、本日の論点は「賃貸借契約書の要否について」です。

使用承諾書と賃貸借契約書

 賃貸物件について届出を行いました。京都市の手引き(いわゆる4月13日版)によると、(3)【法人・個人共通の必要書類】の中の⑥で「賃貸人が…(中略)…転貸を承諾したことを証する書面」とあります。
 私は届出時に貸し主の「使用承諾書」を添付して申請を行いました。すると、その翌日に連絡があり「賃貸借契約書の添付」を求められました。
 理由を聞くと賃料等を確認したいとのことでしたが、私には理解できません。承諾書において審査すべきは転貸を承諾しているか否かであって、賃料が何故問題になるのかが分からなかったのです。ですので、私はおおむね以下の事項を伝えました。
・賃料を確認する理由を知りたい。
・賃料を確認するという事柄が、審査権の範疇に入っているのか知りたい。
・使用承諾書を提出しているにもかかわらず賃貸借契約書の提出を求めるのであれば、根拠を知りたい。
・確認したい事柄を盛り込んだ使用承諾書を提出する場合、賃貸借契約書は不要になるのか知りたい。

その後の経緯

 私が確認を求めた事項について、およそ2時間後に電話で返答がありました。
・提出を求める根拠は条例第四条にある「市の責務」である。
・転貸賃料が賃借料を下回っていた場合、その理由等を確認する必要があるので賃貸借契約書を確認したい。
 主旨になりますが、これが京都市側の回答(のようなもの)でした。

 これに対し私が「使用承諾書を添付した場合でも一律に賃貸借契約書の添付を要求するのは京都市からの最終的な公式見解と捉えて良いか」と尋ねました。すると「添付は義務ではないが、添付がない場合、賃貸借契約の内容について届出人に確認を行う」と返ってきました。

賃借料と転貸賃料の関係は住宅宿泊事業に影響を及ぼすのか

 私が一番疑問に思ったのは、賃借料と転貸賃料の関係性を京都市が確認する必要があるのか、あるなら何のためなのか、ということです。仮に関係性が京都市の予期・想定するものでなかった場合、届出に影響があるのかと尋ねても回答はしどろもどろで要領を得ませんでした。当然でしょう、窓口で言い切るとロクな事がないというのは聡明なご担当者ならお分かりのはずです。

 話しの流れでは「賃借料>転貸賃料」の場合、つまり赤字になる場合に理由を知りたいそうです。たとえば、14万円で借りてる物件を12万で貸します、という広告をしている場合は「なんか怪しい」とお考えのようなのです。
 面白いですよね、高い家賃では入ってくれないから家賃を下げていって、丸々赤字になるより少しの赤字の方が損がすくないから「賃借料>転貸賃料」でも貸す値打ちはある。先の例でいうなら、14万円で借りていて、18万円で転貸に出しても誰も借りてくれない。だから徐々に値段を下げていった。解約できないから、14万円全部損をするよりも12万円の家賃収入を得て毎月2万円の赤字にする方がまだ傷は浅い。
 こういう考え方は経済原理に基づいた至極まっとうな価格設定行為です。これに京都市は何の権限でもっていちゃもんをつけるのでしょうか。それはビジネスとして上手くいってないから民泊なんてせず解約しろ、とアドバイスする気なのでしょうか。余計なお世話も甚だしい、としかいいようがありません。
 他で儲けすぎて赤字を作っておきたい、という人もいらっしゃるかもしれません。その場合、他で儲けすぎていることを疎明するため、京都市さんは確定申告書の控えまで要求するつもりなのでしょうか。

 こうして考えれば分かるように、賃料設定は個人の自由意志で決められることであって、それを役所がとやかく言うことはできないはずです。とやかく言うことができない=指導範囲を超えているのであれば、そもそも確認の対象とはすべきでないのではないでしょうか。
 それをもっともらしく理由をつけて不要な情報まで求めようとする。そうすることに時間を費やして、6週間かけていることの方がよほど問題であって指導の対象になるべきではないのでしょうか。

問題の根幹

 これは、実はとても深い論点を含んでいます。
 行政手続において、求められていない書類まで添付を求めることは行き過ぎであって、むしろ時代錯誤とも言えるのです。
 現に政府は平成9年2月10日に次のような閣議決定を行っています。

【※申請等に対し】(2)添付書類は、申請書等の記載事項の真実性を裏付けるため及び諾否等の判断を行うために必要不可欠のものに限る。
※は筆者注

賃貸料が申請書等の記載事項の真実性を裏付けるため及び諾否の判断を行うために必要不可欠なんでしょうか。そもそも、論点は転貸を承諾しているかどうかだけなんですが。

 こうして考えていくと、現在の京都市における住宅宿泊事業法の受付事務は、この閣議決定の真逆をいく、届出人に過度な負担を求めているように思えてならないのです。

提言

 文句を言うだけなら誰でもできること。ですので、私はこの件について次の提言を行います。

1.審査事項の明確化

 まず、何を審査するのかについて明確にする必要があります。上の例で言うなら、添付書面から審査の対象になるのは転貸の承諾であって価格の高い低いではありません。価格の高い低いを審査対象にするなら、その根拠を明確に示すべきです。京都市の条例第四条のように包括的な規定を持ち出してごまかすべきではありません。もっと具体的な理由を示し届出人を納得させるべきではないでしょうか。

2.任意様式であることを認めるべき

 申請書・誓約書や京都市条例様式以外の添付書類は任意様式であって、決まったフォーマットはないはずです。であるなら、自分たちの枠組みを前提に考えるのではなく、添付書類をまっさらな目で見て、足りているか足りないのか、足りないなら何が足りていないのか、何故そう言えるのかを明確に説明すべきです。

3.減点法の思考は捨てるべき

 足りない=マイナス→だから添付して、という思考、つまり自分たちの想定しているモノが満点で、そこから足りなければ提出を求めて自分たちの100点を目指そうという思考はやめて頂きたい、と感じます。書類は60点で合格です。つまり、提出する側からすれば、60点が100点なのです。それを、受け取る側の合格点に合わせて書類を作る義務は届出人にはありません。
 実際、窓口では「今回はこれでいいけれど、次回からは手引きに合わせてほしい」と言われることがあります。これは「手引きを満点」として捉えているから出てくる言葉であって、純粋に書類に向き合っているとは思えません。同じ書類を使った別の届出時には「分かりやすくてこういう作り方もあるのかと勉強になる」という趣旨の独り言的発言がありました。本質を見極めて書類に向き合うというのは大切なことだと思います。

まとめ

 窓口対応だけでなく、実地調査時、電話応対時での対応は良くなっていると感じており、最近はリミッターが外れることは少なくなりました。
 しかし、新しい手続だからこそ、問題点はうやむやにして進めるのではなく、論点を整理して明確にし、汎用性のある答えを導き出していくことは行政側にとっても届出者側にとっても有意で価値のあるプロセスです。
 私は嫌がられたとしても、この点については粘りづよく対処して、手続の適正化に、自分なりに寄与していきたいと考えています。