旅館業許可申請に関する新指導要綱についての雑感

 京都市において、旅館業許可申請に関する新指導要綱が施行され2ヶ月近くが経過しました。
 実際に新指導要綱に関する申請を行っていますが、それに基づく雑感を記載します。

  • この新指導要綱は原則として良いと考えます。
  • 改良できる点もいくつか見受けられると考えます。
  • 事案に応じた柔軟な対応が必要と思います。

 この新指導要綱は、簡易宿所が激増したため頻発してきた近隣トラブルの解消を狙っていると思われるます。
 新指導要綱は、大まかに言えば、事前に計画を公開し自治会との調整を行うこと、道案内や施設の看板設置を徹底し、近隣とのトラブルを減少させるための具体的な施策を定めています。
 実務的に書類を取りまとめる際、正直な感想として「これは割といい」と感じます。

新要綱が良いと思われる点

 この制度は、一見事業者に対する負担が増えているように思えますが、新築する場合の手続を用途変更に準用しているに過ぎず、この負担は妥当なものであると考えます。
 以下、実際の申請事務にあたって感じた点を列挙してきます。

計画の公開(標識設置)について

 この計画の公開(標識の設置)は、近隣への周知義務とあいまって、地域に資するものといえます。

 以前は、計画を公開する必要がなかっため、近隣へのご挨拶は許可取得後になることもありました。
 しかし、付近の住民からすれば「何になるか分からない」という不安定な状態が長く続くことになります。「ゲストハウスっぽいけどどうなんだろう?」という、どうなるかが分からない状態というのは一番良くないことだと私は思います。
 今回、計画の公開が義務づけられることによって、近隣の皆様は「やっぱりゲストハウスなんだ」と知ることができます。ゲストハウスはできれば建って欲しくないと思っている皆様にとっても「どうなるか分からない」状態よりは「ゲストハウスやります」と知る方が精神的には良いのではないでしょうか。
 また、新指導要綱では、近隣への周知も定めています。どの範囲に周知するかまでは決められていませんが、社会常識的に「向かい三軒両隣」に挨拶へ行くことになるでしょう。
 ここで言葉を交わすことが非常に大切だと、実際に事業主の代理で挨拶に言って実感します。
 近隣の皆様不安に思われることは、防犯・失火・ゴミ・騒音が主な項目です。挨拶に行くにあたっては、当然それらに対しどう対処するかを考えていかなければならず、そういう思考を事業者に持たせる、という意味においてもこの新指導要綱は啓発的な意味を持っています。

道順案内書の提出について

 申請時には、事前に道案内するための文書を提出する必要があります。
 これは、深夜に道が分からず近隣を起こして場所を尋ねるという旅行者に対する苦情が多いことに起因した施策でしょう。
 この道案内についても、一定程度の効果があるものと考えています。

改良点

 とはいえ、幾つかの改良すべき点についても、実際に動きながら見えてきました。

標識の内容

 計画公開で用いる標識は、新築時に使用している標識をほとんどそのまま援用した形になっています。しかし、建築確認申請をともなわない用途変更において、建物の高さが変わることは絶対ないと言っても過言ではありません。
 現地調査においても建物の高さを測る術はないわけですので、この意味不明な記載事項は削除または記載不要とすべきです。

標識の設置時期

 これは、要綱の改良点という訳ではないのですが、標識の設置時期は、申請の20日前とされています。
 これに引っ張られると、標識設置してすぐに内装工事という順序になってしまいがちです。新築の場合、標識設置してすぐは工事にかかれないのですが、その縛りがないため「いきなり工事?」と思われてしまう可能性があります。
 ですので、実務的には「標識設置」→「事前挨拶」と考えてしまいがちですが、工事開始日を基準に事前挨拶を先行させることが円滑に進めるコツといえそうです。

事案に応じた柔軟な対応を

 保健センターによる現地確認では、帳場の開口高について必ずチェックが入ります。
 開口高は、原則としては床から天井までの高さの2分の1以上が必要となっています。この取扱については、土間と床のレベルが異なったり、玄関と居室で天井の高さが異なる場合があることから、新指導要綱に基づいて新しい基準が策定されているようです。
 しかし、木造で用途変更する場合、梁を触ることはできないので、帳場のカウンター位置が著しく低い高さになってしまう場合があります。
 この場合、正直またいで十分通れる高さにも関わらず、またぐことを認めず跳ね上げ式等にするよう指導を受けます。
 こういったケースでは、開口部を2分の1より小さくすることを認めることでカウンターの高さを上げることができますので、帳場の開口部については、原則として2分の1以上としつつも、但し書きで柔軟な対応ができるようにして欲しいところです。

まとめ

 新指導要綱の説明を最初に受けた際は「やっかいなこと始まるな」と思いましたが、実際に動き出してみると、この制度は近隣だけでなく事業者にとっても結果的に益となる効果的な制度であると感じます。これはあくまで「指導」の要綱ですので、対応も個別柔軟にできるはず。事業者側も真摯に取り組んでいる訳ですから、審査する側も画一的な判断にとらわれることなく、本質において妥当な審査をお願いしたいところです。