自転車保険の加入で気をつけるべきこと

 京都市では、平成30年4月1日から、自転車に乗る場合の保険加入が義務づけられます。
 ところが、京都市(京都府も含む)の義務化について、チェックポイントとなるのは「自転車損害賠償保険」に入っているかどうかです。この点についてはまだまだ周知が行き届いているとは言えません。
「自転車保険に入らなきゃ」と思っていらっしゃる場合でも、実は既に「自転車損害賠償保険」(に相当する保険)には加入していらっしゃるケースも少なくないのです。
 今日はこの「自転車保険」について検討してみましょう。
京都市では自転車保険の加入が義務づけられます。

損害保険の代表例「自動車保険」

 自転車保険について考える前に、身近な損害保険の代表である自動車保険を概観してみましょう。
 自動車保険の基本は「対人」「対物」に対する賠償に備えるための賠償責任保険です。そして、この賠償保険に「人身傷害保険」を加えることで自身の死傷に備えます。この「賠償責任保険」と「人身傷害保険」で、加害者になった場合・被害者になった場合の双方に備える、という加入の方式を採るのが一般的です(他にも搭乗者傷害や車両保険があります)。

自賠責保険

 ところで、自動車の対人賠償については「自賠責保険」という強制加入の保険があります。自賠責保険は被害者救済を目的として法律によって制定されている強制保険ですが、支払われる保険金額は死亡で最高3,000万円、後遺障害が残った場合は最高4,000万円で傷害による損害については120万円と支払い限度額が設定されており、決して十分とは言えません。また、自賠責は「被害者救済」が名目ですので、物損については一部の例外を除き補償の対象にはなりません。

 このことから、自動車を運転する場合は任意保険に加入してより大きな賠償に備えることが一般的です。

任意の自動車保険

 任意の自動車保険については通常「対人無制限」の補償が受けられます。対物については賠償金額を設定できますが、私は無制限にしています。
 これらの保険は加害側として相手に対し賠償するのに備える性質の保険です。これだけでは、自分が怪我をした場合には、自賠責保険か相手の保険に頼らざるを得ず、不安になってしまいます。何故なら、先ほど説明したように自賠責保険の補償は大きいとは言えず、物損は担保されていません。加えて、日本国内の自動車保険加入率は8割を切っており、10台に2台は無保険で運転している計算になるからです。無保険の車と事故をすると泣き寝入りになってしまう事例も決して少なくはありません。ですので、自分の身は自分で守るという保険が必要になってきます。

人身傷害保険

 この「自分の損害に自分で備える」ための保険が人身傷害保険になります。人身傷害保険に入っていれば、過失割合で減額した部分もカバーされますし、無保険車相手の事故でも一定程度の補償を受けることができます(但し、後遺障害の等級がついていることが必要です)。

ここまでのまとめ

 つまり、自動車保険は対人・対物賠償責任が基本で、自身に対する補償は任意で付帯させることになります
 これを自転車保険に当てはめて検討していきましょう。

自転車保険の検討

 多くの保険会社から出されている自転車保険の内容は、基本的に「個人賠償責任補償」と「自身の怪我に対する補償」の二本立てになっています。
「個人賠償責任補償」と名されているとおり、この補償は自転車乗車中に人や物を傷つけてしまった場合だけでなく、公園でサッカーをしていて隣家の窓ガラスを割った場合など、日常生活における賠償責任にも対応していることが一般的です。

 そして、京都市が加入を義務づけるのは、正確に言うと「自転車保険」ではなく「自転車損害賠償保険」なのです。

 実際、京都市が発行している周知チラシでも「自転車損害賠償保険に相当する補償が基本補償又は特約で入っていれば、既に自転車損害賠償責任保険に加入している」という趣旨の文言がチャート式チェックシートに記載されています。そして「特約の名称は、個人賠償責任補償特約、日常生活賠償特約など、保険会社により異なります」とされています。

 つまり、個人賠償責任補償特約に加入していれば、原則的には自転車損害賠償保険には加入していることになるのです。ここは周知の少ない点で、もっと周知が必要でしょう。

意外に入っている個人賠償責任保険

 個人賠償責任保険は、それ自体には加入していないとしても特約で付帯させていることが多い賠償保険です。
 たとえば、お子さんのために生協のジュニア共済に加入していらっしゃれば、月額140円で家族全員が被保険者となって最大3億円が保障される特約があります。

 もちろん、自動車保険にも付帯サービスとしてついています。私は「おとなの自動車保険」に加入していますが、その理由は自転車保険の特約があったことと、個人賠償責任保険の保障額が無制限であったことが理由です。その他、火災保険の特約として販売されている会社もあります。

 今加入なさっている保険の内容を確認し「個人賠償責任特約」が付帯されていれば、原則として京都市における保険加入の義務化には新たに対応する必要はない、といえます。ただし、自分が自転車でひかれた場合の補償はありませんので、そういう意味で自転車保険を検討する価値はあるかもしれません。

まとめ

 自転車の保険義務化の流れが加速し「自転車保険」という言葉をよく耳にするようになりました。しかし、京都市で義務になっているのは「賠償責任保険」としての部分であって、それは必ずしも「自転車保険」という名称でなくてもよい、ということは十分に周知されていません。

 個人賠償責任特約は、月額の特約保険料が安価なため重複してかけてしまっている可能性もあります。私自身、自動車保険で個人賠償責任に加入してから他の個人賠償責任の特約を解約し整理しました。

 自転車保険に加入する前に、まずはご自身の保険内容を見直し、個人賠償責任特約に加入しているなら、それが家族全員をカバーしているものなのか、保障額はいくらなのかをしっかりと確認して再度検討することが大切です。

 そして、最も大切なことは、自転車も軽車両であることを自覚し、交差点の一旦停止はしっかり守るなど、交通ルールを遵守した乗り方をすることですよね。
 事故は起こさない、巻き込まれないのが一番です。年末で慌ただしい時期になりますので、安全運転を心がけたいものです。