歩道上における自転車対歩行者の非接触事故について

本稿のポイント

  • 歩道上で行った事故について、警察官は現場で事実確認した上でそれを「自損事故」であると断定できる。
  • 歩道上で歩行者と自転車が事故を起こした場合、因果関係の成立に争いがなかったとしても、警察官が職務上の権限で「自転車の自損事故」として処理することがきる。

自転車で走行中に歩行者と非接触事故を起こしました。これは私自身の話です。
その事例について内容が似ている事故事例をインターネットで探したのですが事例が見当たりませんでした。示唆に富む内容ですので共有します。

事故態様

歩道を自転車で走行中、並んで歩いてた老夫婦の左側ご婦人が、急に左側に寄ったため私は進路を阻まれた形となり、接触を避けるためハンドルを切って転倒、そのまま車道に転がりました。
後で分かったことですが、その左側のご婦人は、前から自転車が接近していて、それを避けるために行動したのだと主張していました。
歩道を自転車で走行中に歩行者を追い越そうとした際、歩行者が急に進路を変えたため非接触で転倒した事例

  • 自転車通行可となっている歩道上で起こった事故です。
  • 自転車VS歩行者の事故ですが、接触はしていない非接触事故となります(警察はこれを「因果関係事故」と呼んでいました)。
  • 歩行者が進路を変えたことは歩行者自身認めており、事故の因果関係に争いはありませんでした。

以上が事故態様です。私は転がりましたが革のジャケットでしたので服は擦り痕もなく、身体も痛みはありませんでした。

事故後の経緯

しかし、交通事故では翌日に痛みが発生することがままあります。ですので、万が一のことを考えて「連絡先を交換しておきたい」と言いました。
すると、老夫婦の夫が「そんな必要はない」と言いました。
私は埒が明かないだろうと予測し、押し問答をすることもなく「では警察を呼んでおきましょう」と110番通報し、歩道上の非接触事故であることを伝えました。

警察官現着後も老夫婦は住所氏名を名乗らず多少のすったもんだがあり、警察官は少し離れた場所で10分程度電話した後戻ってきて「これは自損事故です」と言いました。

警察官の主張は概ね次の通りです。

  • この歩道は自転車通行不可であり、自転車は原則通行できない(これは事実誤認で警察署もそれを認めました)。
  • 本来、自転車が歩行者を追い越す場合、速度を落とすか押して歩くことが必要で、それをしていないから転倒したことになるので、これは自損事故である。
  • 自損事故である以上、相手方は存在しないのであって、相手が住所氏名の開示を拒んでいれば警察としては強制的に聞き取ることはできない。

それまでの警察官の「ものの言い方」から、ここで押し問答するのも徒労に終わるだろうと推測し、また、予定も立て込んでいたためその場はそれで解散し、予定を終えた後、京都府警の広聴係に連絡して、当該警察官の職務執行が適正であったか再度の確認を求めました。

私が主張したのは概ね次の論点です。

1.自損事故の定義と決定権

自損事故であると断定することは、自転車側の過失が100%であると断定することと同義になります。
しかし、ご存じの通り、警察官は過失割合を判断する機関ではありません。
ですので、警察官が現場で「自損事故である」と断定することが法律上可能であるかどうかを知りたい。

2.因果関係の否定

今回の事故では、歩行者の老夫婦側も、夫人が左に寄ったために私の進路を阻み転倒したという因果関係自体は争っていませんでした。
この状況で、警察は因果関係に争いがないにも関わらずこれを「自損事故」=「因果関係が認められない事故」と判断しました。
この判断が妥当であったのかどうか確認を求めたい。

これについて後日、管轄警察署の役席者からご連絡を頂きました。
そこでの回答は次の通りです。

  • 今回の事故は明らかに自損事故と言える。
  • 警察官は、現場において職務上の権限としてそれを「自損事故」として処理できる。
  • 因果関係に争いがない場合でも警察官が「自損事故」としても差支えはない。

これは、京都府警本部にも確認を取ったとのことで、京都府警としての正式な見解と言えます。

私は、不思議に思っていることを伝えました。

現状、歩道上の事故であっても裁判例が一定数確認できる。
裁判例があるということは、過失を争っていることになるが、現場で自損事故扱いされると相手方の住所氏名を知ることができなくなる可能性があり、争う機会を奪われることになるのではないか?

それに対しても、結局回答は「過失は判断できないが自損事故とは判断できるので、相手方から強制的に住所氏名を聞き出すことはできない」ということした。

以上がその後の経緯です。

一般論としての当てはめ

実際、歩道を複数人が並んで歩いて円滑な通行を妨げている光景は日常見られます。
ですので、私と同じように非接触で転倒するという事例も毎日のように起こっているのではないかと推測します。

この事例で、因果関係が存在していてそれについて両者が認めているにも関わらず警察官が現場で「自転車が100%悪い」と決めつけられるのは、正直不思議であり若干違和感もあります。

けれど、そういうことなんだそうです。

これを歩行者側の視点で見れば、次のことが言えそうです。

  • 普通に歩いてさえいれば、悪意なく左右に動いた結果自転車がよけるために転倒しても、自分は全く悪くないと言っていい。
  • その時に、名前や電話番号を教えろと言われても「自損事故扱いになるのでその義務はない」と言い切れる。
  • それでも相手が食い下がる場合は、警察を呼んでこのブログを見せれば解決できる。

また、自転車側の視点でこの事故を見れば次の教訓が得られます。

  • 歩道上における歩行者対自転車の事故は、よく書かれている通り、原則自転車の過失が100%となる。
  • 歩道上で自転車走行中に歩行者と事故を起こした場合、おおよその場合、歩行者の動作にかかわらず自転車が圧倒的に不利になる。
  • 自転車は、車道を走っているほうが加害者になるリスクは少ない。

まとめ

今回、相手方が連絡先の交換を拒んだためにこう言った経験をしました。

自損事故とは相手方のいない事故のことであって、相手方が存在して因果関係に争いがない場合でも警察の職権で自損事故として処理できることは違和感が拭えません。その理由は、自損事故は「100%こちらの過失です」という結論になるからです。
相手方が因果関係を認めているんだから、過失割合を争う機会があるかもしれない。その場合裁判になる訳ですから相手方の住所氏名が必要になる。

けれど、警察が職権で自損事故と判断するとその機会を奪われてしまう。
とはいえ、そういうもんなんだと言われればそれまでです。

私も行政書士として警察署には車庫証明や古物商申請で頻繁にお世話になっているため「法令上の権限があるなら根拠条文を示してほしい」とまは言えませんでした(自分の職業は明かしていたため)。

今回の件で学んだ、と言うより再確認したことは「自転車は車道を走る方がいい」ということです。
そうは言っても、京都市内の大通りは路上駐車が常態化。膨らんで通り過ぎるのもある意味命がけです。最近自転車の車道走行が推奨されていますが、それならば路上駐車の排除をセットでやる必要はあると私は考えています。

そして、この事故の一番の教訓は何より「自転車は常に止まれる速度で走る」ことです。これについては私も日々を省みて行動を改めなければならないと感じました。
本稿をご覧頂きました皆さま、自転車の場合は安全運転を、歩行者の場合は他の通行主体に気を配った通行を励行してまいりましょう。