4月 2nd, 2012|ブログ|

 今日は、法律上の「死」について検討します。医学的進歩が著しい現在、死を明確に定義するのは困難です。ここでは、そのような医学的な概念とは別の、法律上の「死」について考えていきます。

<ポイント>
・法律には、所在や生死が不明の状態で自然を死亡したものと取り扱う制度がある。

1.法律で定義される死

 法律上、自然人の死(以下、「死亡」と言います。)は、相続の開始原因となり、民法の世界においても、実生活においても重要な意味を持っています。
 人の死亡は自然現象ですので、その事実によって相続が開始しますが、財産の承継には「手続」が必要となります。その手続においては、被相続人を保護するためにも死亡の事実が公に証されていなければなりません。そこで、自然人が死亡した時は、届出義務者が死亡の事実を知った日から原則7日以内に届出なければならない旨が、戸籍法に定められています(戸籍法第86条要旨)。

2.失踪宣告制度

 しかし、残念ながら行方が途絶えた著名な冒険家や、沖で遭難して捜索が打ち切られた方の親族関係や財産関係が、いつまでもそのまま続いてしまうと、時に不都合を生じる場合もありえるでしょう。
 そこで、民法では、「失踪宣告」なる制度を定め、生死不明になった状態に応じ、一定期間経過後に家庭裁判所に請求することにより、失踪者を「死亡したものとみなす」ことにしています。
 通常の行方不明者(不在者)は、生死が7年間明らかでない場合に、7年後に失踪宣告の申立ができ、認められれば7年経過後に死亡したとみなされます。
 また、水難事故や雪崩による遭難などは、危難の去った後1年後に申立が可能となり、危難の去った時点で死亡したものとみなされます。

3.認定死亡制度

 また、戸籍法第89条には、「認定死亡」と言われる制度が存在します。

 戸籍法第89条は、「水難、火災その他の事変によって死亡した者がある場合には、その取調をした官庁又は公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。」と規定されています。
 失踪宣告との大きな相違は、「死亡した者がある場合には」とされていることでしょう。
 たとえば、海上での水難事故の場合、捜索が打ち切られても漂流の可能性があり、官庁や公署が安易に死亡を認定はできません。ですので、親族からの認定死亡の申出があること等が要件となります。
 なお、失踪宣告は、利害関係人のみが申立することができ、検察官は申立権者ではありません。これは「家族が帰ってくるのを待っているかもしれないのに検察官が勝手に申立ができるというのはおかしいから」であると言われています。
 海上水難事故の死亡認定に親族からの申出が必要であるのは、このこととパラレルに考えることができるでしょう(行方不明者に不在者財産管理人を設ける場合は検察官も請求権者となります)。

 認定死亡は、たとえば、火災で推定在宅者の人数とご遺体の数は一致するものの、判別が不能である場合や、土砂災害など、周囲の状況から生存の確率が極めて低い場合を想定した条文であると考えられます(私見)。

4.取り消しの効果

 一方、失踪宣告、認定死亡はともに、その制度によって死亡したと戸籍に記載された方が生存している可能性があります。認定死亡でも、その確率は極めて少ないとは言え、生存の可能性はあります。
 そこで、生存していた場合が問題となりますが、この場合、認定死亡の場合、死亡は「推定」であって、生存の事実だけで、認定死亡の効果は消滅し、戸籍は訂正されることになります。
 一方、失踪宣告の場合、その効果は、家庭裁判所の審判を経て確定して死亡したものと「みなされて」おり、生存の事実のみをもって覆すことはできません。従って、失踪宣告を取り消すための審判を申し立てる必要があり、それまでは、生存が明らかであっても戸籍上は死亡という奇妙な状態が続くことになります。

ご参考になさってください。

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