株式会社定款の逐条解説、目的についての解説です。

定款での用例

第1条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1.(事業内容を記載)
2.上記に附帯する一切の業務

第1条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
1.(事業内容を記載)
2.(事業内容を記載)
3.上記各号に附帯関連する一切の事業

「目的」総論

 株式会社を設立する際には、会社の事業内容となる事業の「目的」を定め、それを根本の規則となる「定款」に記載する必要があります。
 目的は株式会社の定款において「必要的記載事項」とされており、目的の記載がない定款は公証人の認証を受ける前に指導が入ります。

「目的」記載のルールとポイント

  • 適法性を有している必要がある。
  • 少なくとも一つの目的は営利性を有している必要がある。
  • 明確性を有している必要がある。
  • 会社運営の上では、ある程度の具体性を有している必要があろう。

適法性を有していること

 株式会社は設立登記によって成立する法人です。つまり、法によって「人」と同じような(完全に同じではない)権利義務関係の主体となる地位を与えられている存在である、と言えます。
 法によって地位を与えられた存在である以上、その会社が行う事業目的は、当然に法に適ったものでなければなりません。
 ですので、たとえば「窃盗団の運営」と言った目的はもちろん登記することはできません。
 一方、「法律諸問題のコンサルタント業務及び代理業務」という目的は、一見適法に思えますが、法律相談その代理業務は弁護士法の定めによって原則として弁護士の独占業務となっているため、登記することはできません。

少なくとも一つは営利目的があること

 株式会社は、営利を目的とする社団です(近時、非営利目的株式会社の概念が提唱されていますが、ここでは深く立ち入りません)。
 ですので、その目的が株主への剰余金・残余財産の分配に結びつかないような非営利目的のみである場合、恐らく定款認証前に公証人の指導を受けることになるでしょう。

明確性を有していること

 会社目的は登記され、その会社の重要な情報として誰もがその情報を取得することができます。せっかく情報を取得したとしても、明確でなければ意味がありません。そこで、会社目的には明確性が求められています。
 明確性は、次項で検討する「具体性」と重なる部分もあるため、説明しづらい概念です。実際、古い事例集で「目的に適さない」とされた目的は「明確性・具体性」両方の点において否となったものも多くあります。
 ここからは私見ですが、明確性というのは、まず第一に使用している各単語の明確性が求められていると言えるでしょう。つまり、カタカナ語辞典・外来語辞典に載っていないような単語を使うことは明確性を損ねることになります。
 次に、旧商法時代は、単語自体は明確であっても、全体として「?」と思えるような目的も明確性の観点から目的に適さないとされた事例がありました。しかし、後述するように、具体性の審査がなくなった今では、単語自体が明確であれば明確性を有していると言えるのかも知れません。

 明確性・具体性の判断はとても難しいものですので、具体例をご覧頂きましょう。
「調味食品の販売」(調味食品に具体性がないとして否)
「特殊栄養食品の販売」(特殊栄養食品に明確性がないとして否)
 いかがでしょう。微妙ですよね。

 明確性については、医療系や研究開発系の事業を行う場合、専門用語を使う関係で問題になるケースがよくあります。その場合、私はまず公証人のチェックを受けてOKが出た時点で法務局にも確認しておくようにしています。
 行政書士は登記ができませんので、定款認証で仕事が手を離れてしまいます。ご自身で設立登記をされるにせよ、専門家に任せられるにせよ、登記で補正がつかないようにするため、懸念材料は全て事前に確認するのが最善です。

ある程度の具体性を有していること

 一昔前は、上記の三要件の他に、具体的であることも要件となっていました。
 しかし、現在ではこの具体性の審査はなされないことになっており、「商業」と言う目的も登記自体は可能となっています。
 しかし、明確性で検討したように、会社目的は登記されますので、「商業」だけでは何をやっているか結局わからないことになってしまいますので、登記可能かどうかは別にして、ある程度具体的な目的を記載することが、公示上も望ましく、また、それが会社の利益になるのではないかと私は考えており、定款作成時にはある程度具体的な目的を記載することをおすすめしています。

その他のポイント

 各目的の前に記載している数字の符号ですが、「1.」という形式でなくとも「(1)」でも登記可能です。

 目的を列挙した末尾には「上記各号に附帯関連する一切の業務」と言った一号を加えるのが実務での取扱になっています。

関連条文

定款の記載又は記録事項)
第二十七条  株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一  目的
二  商号
三  本店の所在地
四  設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五  発起人の氏名又は名称及び住所

株式会社定款の逐条解説、商号についての解説です。

定款での用例

第1条 当会社は、株式会社みやこ事務所 と称する。

第1条 当会社は、株式会社Miyako Office と称する。

第1条 当会社は、株式会社みやこ事務所 と称し、英文では、
   Miyako Office CO., LTD. と表示する。

「商号」総論

 株式会社を設立する際には、会社名である「商号」を決めて、それを根本の規則となる「定款」に記載する必要があります。
 商号は株式会社の定款において「必要的記載事項」とされており、商号の記載がない定款は公証人の認証を受ける前に指導が入ります。

「商号」記載のルールとポイント

  • 必ず「株式会社」という文字を使う必要がある。
  • 同じ場所で同じ名前の商号の会社を二つは作れない。
  • 従って、本店予定地に同じ商号の会社がないか調べる必要がある。
  • 使える文字と使えない文字がある。
  • 英字と数字は全角で登記される。
  • カタカナ語句の間にスペースを用いても登記は詰めて表記される。

「株式会社」を使う

 株式会社の商号においては、必ず「株式会社」という文字を使わなければなりません。
 「株式会社」を先につけるか、後でつけるか、いわゆる「まえ株」、「あと株」については、制限はなく、真ん中につけることも禁止されている訳ではありません(もっとも、見たことはありませんが)。

同一本店同一商号の禁止

 同じ住所で既に登記されている会社と同じ場所で会社を作ろうとする場合、同じ商号を用いることはできません。
 このため、会社を設立する場合は、必ず本店所在地に同じ商号がないかを調査する必要があります。もっとも、専門家に定款作成を依頼される場合、これは通常専門家の仕事になりますので、お客様が事前に調査される必要はありません。しかし、中にはズボラな資格者がいるやも知れませんので「類似商号は大丈夫でしたよね?」と確認しておかれると安心ですね。

商号に使える文字、使えない文字

 会社の商号には使える文字と使えない文字があります。

使える文字

  • ひらがな
  • 漢字
  • カタカナ
  • ローマ字(大文字・小文字とも)
  • アラビヤ数字

 これらの文字は、組み合わせて使用することも可能です。たとえば、「株式会社ボンド007京都」という商号でも大丈夫です。

使える符号

  • 「&」(アンパサンド)
  • 「’」(アポストロフィー)
  • 「,」(コンマ)
  • 「‐」(ハイフン)
  • 「.」(ピリオド)
  • 「・」(中点)

 符号について、字句(日本文字を含む。)を区切る際の符号として使用する場合に限り用いることができます。したがって、商号の先頭又は末尾に用いることはできません。ただし、「.」(ピリオド)については、その直前にローマ字を用いた場合に省略を表すものとして商号の末尾に用いることもできます。
 なお,ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り,当該単語の間を区切るために空白(スペース)を用いることもできます。
(法務省ホームページより引用)

使えない文字

 使える文字に決められている文字以外は商号に使用することはできません。たとえば「株式会社hana×hana」や「株式会社Ⅸ!」などです。

登記は全角です。

 英字・数字・カタカナの商号は全角で登記されます。定款認証の際に半角、全角で指摘を受けた経験はありませんが、みやこ事務所では、登記と定款の同一性を重視する観点から、英字の商号は全て全角で表記しています。

スペースは原則使えません。

 商号が登記される際は、ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合を除き、語句を区切る際にスペースを用いることはできません。

登記できない例

  • 株式会社 レディ ステディ ゴー
  • 株式会社 日本 再生

 一方、英単語の場合、くっつけると全く意味不明になることからか、スペースで区切ることが認められています。

登記できる例

  • Kyoto Times株式会社

関連条文

(商号)
第六条  会社は、その名称を商号とする。
2  会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。
3  会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。

(定款の記載又は記録事項)
第二十七条  株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一  目的
二  商号
三  本店の所在地
四  設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五  発起人の氏名又は名称及び住所