公用文

2021年1月26日、本稿は閲覧者様からのご指摘受け見解を訂正致しました。

 国土交通省からの通達の取扱につき、役所でトラブルになったことがあります。

 国土交通省からの通達によれば「A及びB、C又はDが必要」と書かれている。

 この場合、本来、必要なものは、「A及びB」か「C」か「D」の三つのうちのどれか、ということになります。

【追記】
 出稿時に記載した上記私の見解は間違いで、以下の記述は間違った理解になります。上記表現で正しい答えは「A」に加えて「B」「C」「D」のいずれか一つということになります。

 しかし、「C」を提出した私に、役所の吏員は「A」が足らないから必要な証明は交付できない、と言いました。私は、「B」は必要ないのか、というと、彼女は「必要ない」という。「A及びB」がパッケージになっていることの矛盾を指摘すると、上役の処へ行き、それでも交付できないと言い放ちました。

 書類は結局交付されるのですが、ここでのトラブルは本題ではありません。
 今日は、公用文の書き方、読み方に関するお話しです。

名詞を並列に用いる場合の公用文の書き方

 上記の通達を再度考えましょう。

「A及びB、C又はDが必要」

 「A及びB」はこれでひとくくりです。これを「甲」に置き換えます。すると、上記の通達は「甲、C又はDが必要」となります。
 このようにして見ると、必要な物は、甲、C、Dのいずれかであって、選択列挙の形式として記載されていることがよくわかります。

前述の通り、正しい理解は「A」及び「B以下」であって、上記の私の見解は誤っていました。

 では、この通達を例にして、ABCDの全てが必要であると記載すべき場合、どのような記載になるでしょう。
 この場合は「A、B、C及びD」となります。

以下は、解説を分かりやすくするため、削除用法を用いず修正した説明を掲載します。

「及び」「並びに」と「又は」「若しくは」の用法について

「及び」は助詞でいうなら「~と~のグループ」という言葉に置き換えることができます。「A及びB」というのは「AとBのグループ」という意味です。
グループとグループをさらに結びつける場合「並びに」を用います。
「又は」は「~か~のグループ」という言葉に置き換えることができます。「A又はB」というのは「AかBのグループ」ということで、選択的な意味合いを持っています。以下、具体例で当てはめてみます。

「及び」を使う集合列挙の場合

  • (A+B)=A及びB
  • (A+B+C)=A、B及びC
  • (A+B)+C=A及びB並びにC
  • (A+B)+(C+D)=A及びB並びにC及びD
  • (A+B)+C+D=A及びB並びにC並びにD

 ここで大切なことは、カッコでくくる分類の方法です。この括弧は、階層を示しています。次の語群で当てはめていきましょう。

ジャズ・クラシック・JPOP・洋画・邦画・落語

 これらの名詞群を使って集合列挙を表記してみましょう。

  • ジャズ及びクラシック
  • ジャズ、クラシック及びJPOP
  • ジャズ及びJPOP並びに邦画
  • ジャズ及びクラシック並びに洋画及び邦画
  • ジャズ、クラシック及びJPOP並びに洋画及び邦画並びに落語

 つまり、同種のブロック(分類や階層とも言える)毎にくくり、同種のものは及びで、及びではつなげないものを「並びに」でつないでいく、というのが原則的な理解になります。。

「又は」を使う選択列挙の場合

  • (AorB)=A又はB
  • (AorBorC)=A、B又はC
  • (AorB)orC=A若しくはB又はC
  • (AorB)or(CorD)=A若しくはB又はC若しくはD
  • ((AorB)orC)orD=A若しくはB若しくはC又はD

 選択列挙の場合、一番小さな同種のブロックは「又は」で連結しますが、大きなブロックが出てくると、「又は」は大きなブロックで用い、小さなブロックには「若しくは」を用います。3階層になった場合、「又は」は一番大きなブロックでのみ用います(5番目の例)。
 上記の語群を用いて選択列挙を表記してみましょう。

  • ジャズ又はクラシック
  • ジャズ、クラシック又はJPOP
  • ジャズ若しくはJPOP又は邦画
  • ジャズ若しくはクラシック又は洋画若しくは邦画

「並びに」「若しくは」のルール

 「並びに」「若しくは」には、簡単なルールがあります。それは、
「及び」のない連結に「並びに」を使う余地はなく、「又は」のない連結に「若しくは」を使う余地はないということです。
ですので、たとえば会社目的を考える際に、
・不動産の売買、賃貸並びに管理
という一文があれば、これはそれだけ公用文としては適切でないことがわかります。
この場合は、
・不動産の売買、賃貸及び管理
が正しい記載となります。

民法中の使用例

 公用文でよく例示されるのは、民法第974条第3号ですが、この条文は、本来「又は」を使うべき処に「及び」を使っている誤った例として紹介されるケースもあります。この条文で「及び」「又は」のどちらを用いるかは難しい処ですが、及びが「and」、又はが「or」に対応して用いられることを考えると、「又は」が正しい使用法と言えるでしょう。

終わりに

 本稿は出稿時に公用文の用法集にもあたって整理していたのですが、間違いを指摘され、もう一度読み直してみると自分の理解が正しくないことが分かりました。
 長期間にわたって誤った理解を掲載しており申し訳ございません。正しい情報を適切に出稿してインターネットインフラに寄与できるよう、引き続き研鑽に励みます。(令和3年1月26日、投稿を大きく改変しました)