印鑑証明書の有効期限とその計算方法について

 今日は、印鑑証明書の有効期限やその期限の考え方について検討します。

ポイント
・印鑑証明書自体に有効期限が設定されている訳ではない
・実務上、印鑑証明書は作成後3ヶ月以内のものを使う場合が多い。
・期間計算は、民法の規定に従う。

印鑑証明書の有効期間

印章の見本 印鑑証明書は、銀行に対してよく提出することから、一般にも馴染みある書類と言えるでしょう。印鑑証明書を規定している法律自体はなく、各自治体が条例によって定めています。また、印鑑証明書や住民票、法務局で取れる会社の代表者事項証明書について、その有効期間を定めた一般法もありません。
 しかし、一般的には「印鑑証明書の有効期間は三ヶ月」と言うある種の固定概念が見られることも事実です。この「三ヶ月」という数字はどこから出てきたのでしょうか?

印鑑証明書の有効期間が「3ヶ月」とされるのは何故?

 これは、私見になりますが、不動産登記令で定められた有効期間が大きく影響しているのではないかと思います。
 不動産登記手続においては、作成後三ヶ月以内の印鑑証明書の添付が必要となる場合は法定されています。たとえば、不動産に抵当権を設定する場合です。抵当権を設定するのには、金融機関が関与します。金融機関はお客様に印鑑証明書をお願いしなければなりません。この際、「三ヶ月以内」ということを念押ししますので、これが一般化していったのではないかと、私は考えています。

不動産登記手続の実際

 しかし、不動産登記手続において作成後3ヶ月以内の印鑑証明書を添付する必要があるのは、法定されている場合のみであって、たとえば、相続登記に添付する遺産分割協議書の印鑑証明書は作成後1年前のものでも問題ありません。
 むしろ、「なんでもかんでも」三ヶ月以内の印鑑証明書を求められるのは、金融機関に多い気がします。

印鑑証明書の役割

 印鑑証明書は、押印された印影と証明書の印影を照合することによって本人確認を行うため以外に、実在人であることを確認する役割も有することがあります。実在人であることを確認するためには、日付は新しい方がよく、よって金融機関が3ヶ月以内の印鑑証明書を要求するのにも、理由はあると言えるでしょう。

印鑑証明書の有効期間

 では、印鑑証明書の有効期間について、「作成後3ヶ月」と条件が付された場合で考えていきます。
 まず、起算日については、民法140条の定めにより、初日は参入されません。

第百四十条  日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

 
 次に、期間が終わる日です。

 根拠法令は後に記載して、先に実例で考えます。

  • 3月2日に作成した場合:
     3月3日が起算日となり、6月2日の満了をもって有効期間が終わる。
  • 2011年2月28日に作成した場合:
     翌3月1日が起算日となり、5月31日の満了をもって有効期間が終わる。
  • 2011年11月30日に作成した場合:
     12月1日が起算日となり、2012年2月29日の満了をもって有効期間が終わる。
  • 9月29日に作成した場合:
     9月30日が起算日となり、翌年1月4日の満了をもって有効期間が終わる。但し、1月4日が土曜日或いは日曜日だった場合、次の月曜日の満了をもって有効期間が終わる。

 期間の満了に関する論点は二つです。一つ目は暦で計算するということ。従って、月の初日(1日)が起算点になると、末日は3ヶ月後の月末日となり、それが2月なら28日(或いは29日)となり、10月だと31日になります
 二つ目の論点は、期間満了日が休日だった場合です。行政機関に印鑑証明書を提出する場合、その休日とは「行政機関の休日に関する法律」に定められた休日のことで、休日に閉庁している場合(ほとんどが閉庁しているでしょう)、民法第142条の定めによって期間はその翌日に満了することになります。
 つまり、土曜日や日曜日に期間が満了する場合は、次の月曜日の満了まで期間が延長されますし、月曜日がさらに祝日だった場合には翌日まで延長される…という具合です。

民法
(期間の満了)
第百四十一条  前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。
第百四十二条  期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律 (昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。

行政機関の休日に関する法律
(行政機関の休日)
第一条  次の各号に掲げる日は、行政機関の休日とし、行政機関の執務は、原則として行わないものとする。
一  日曜日及び土曜日
二  国民の祝日に関する法律 (昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日
三  十二月二十九日から翌年の一月三日までの日(前号に掲げる日を除く。)
2  前項の「行政機関」とは、法律の規定に基づき内閣に置かれる各機関、内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関として置かれる各機関及び内閣の所轄の下に置かれる機関並びに会計検査院をいう。
3  第一項の規定は、行政機関の休日に各行政機関(前項に掲げる一の機関をいう。以下同じ。)がその所掌事務を遂行することを妨げるものではない。
(期限の特例)
第二条  国の行政庁(各行政機関、各行政機関に置かれる部局若しくは機関又は各行政機関の長その他の職員であるものに限る。)に対する申請、届出その他の行為の期限で法律又は法律に基づく命令で規定する期間(時をもつて定める期間を除く。)をもつて定めるものが行政機関の休日に当たるときは、行政機関の休日の翌日をもつてその期限とみなす。ただし、法律又は法律に基づく命令に別段の定めがある場合は、この限りでない。

まとめ

 前項後段で検討した論点は、印鑑証明書を行政機関に提出する場合の検討です。民法142条に規定されている通り、休日であっても取引をする慣習があれば、印鑑証明書の有効期限はその日に満了します。ですので、金融機関に提出する印鑑証明書は、やはり日付に余裕のある方が安心でしょう。住民票に有効期間が定められている場合も同様に考えることが可能です。