『公開会社』の概念について

 今日は、株式会社における『公開会社』の概念についてのお話しです。

<ポイント>

・株式会社定款に譲渡制限株式以外の株式を発行する旨を定めている場合、当該会社は公開会社と分類される。

1.結論

 株式会社における「公開会社」の概念は、会社法第2条第5号で次のように定義されています。

公開会社 その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。

2.論点

 上に掲げた条文を読めばわかるように、公開会社とは、発行する株式につき譲渡制限株式以外の株式を発行する定めを設けている株式会社のことを言います。
 では、譲渡制限株式以外の種類株式を発行する定めが定款にあるけれども、実際は発行していない会社は、どうなのでしょう?これは実務的にも、会社法を学ぶ受験生の方にとっても意外と盲点となるトピックです。

 答えは条文にあるとおり、譲渡制限株式以外の株式を発行する「定款の定めを設けていない」会社ですので、定款に譲渡制限株式以外の株式を発行する定めがあれば、その株式を実際に発行していなくとも、公開会社となります。

3.中小企業の企業統治手段としての種類株式

 種類株式は、ある意味では中小企業には縁遠い法制度でした。しかし、近時、同族経営とは異なり、異業種の代表者が共同出資して株式会社を設立したり、小さな会社でも積極的に第三者割り当ての増資を行うケースが増えています。これらは、ソーシャルネットワークが生み出した新たなビジネスモデルとも言えるでしょう。

 そのような会社運営においては、議決権を制限したり、取締役の選任権を特定の株主に与えたりできる種類株式の存在は利用価値の大きいものとなっています。
 私自身、最近資本金3,000万円の会社で種類株式を発行している登記記録を目にして、「時代だな~」と多少驚きました。

4.まとめ

 種類株式は企業統治の方針に従って有効利用すれば、機動的な会社経営を可能にする魅力的なツールです。たとえば、FACEBOOKつながりで会社を作る時などに、株主の地位を差別化して多くの出資を募ることができるでしょう。
 しかし、そのような場合に、譲渡制限の設定をしておかなければ、株式は簡単に譲渡可能となり、見ず知らずの人間が会社経営に関与してくることになりかねません。種類株式の選定や設定にあたっては、事前に当職などの専門家へ相談されるとよいでしょう。

 ご参考になさって下さい。