レ・ミゼラブルのラッセル・クロウについて

 今日は、上映中の映画、レ・ミゼラブルでラッセル・クロウが演じているジャベール警部のパフォーマンスに関するお話しです。

ミュージカル『レ・ミゼラブル』

 劇団四季でおなじみの「キャッツ」、「オペラ座の怪人」や「ミス・サイゴン」と並んでニュー・ヨークでロングラン公演を続けた人気オペラ。
 誰もが知る名前、キャッチーなメロディラインとドラマティックな構成が魅力で、多くの「レミゼファン」がいらっしゃることでしょう。

ジャベール警部

 ジャベール警部は、劇中、ジャン・バルジャンを追いつめる冷徹な警部として登場します。法と神を信じ、己の信じる正義によってバルジャンを追いつめるジャベールは、悪役という存在ではありません。そんなジャベールがソロで歌う「Stars」は、レミゼの中でも人気のある楽曲です。
 ところが、出回ってるCDや、ミュージカルでのパフォーマンスと、ラッセル・クロウの歌唱のタッチが大きく異なっていることが理由なのか、海外のインプレッションでは、ラッセル・クロウの歌唱に否定的な意見をよく目にします。

ミュージカルと映画の差異

 私はレミゼの中でもこの「Stars」がお気に入りで、最初に映画を見た時は、?????と言う気がしました。ちょっと自分が持ってる歌のイメージと印象が違うな~という感じです。
 けれど、2度目に見に行って、今、このサントラを聴いていると、これはこれで映画の世界観を上手く表現しているんだな、と思うようになりました。
 ブロードウェイで3階席からミュージカルを見た時は、アクターの顔は当然小さくて見えません。けれど、映画なら立ち振る舞いや顔の表情、カメラワークでも伝えることができる。
 つまり、ミュージカルと映画は、違う土俵のエンターテイメントであって、それを同じ天秤にかけて比べる意味はさほどないのでしょう。

比較できる音源

 レミゼのサウンドトラックについては、映画のサントラの他、アニバーサリーコンサートのCDや映像があります。
 これらのパフォーマンスは、確かにラッセル・クロウのそれとはテイストが違います。
 コンサートでの歌唱は、当然、聞かせることが目的です。そういう意味で上手い。けれど、映画の中の歌には「台詞」という側面があり、台詞である以上、その人物をどのように解釈しているかによってニュアンスは変わってくる。
 その点で、ラッセル・クロウの歌唱は味わい深いものがある、と私は思います。

ミュージカルの面白味

 日本人がライブで楽曲を歌うとき、私にはCDの通りに歌っているように聞こえてしまいます。ストーンズやブルース・スプリングスティーンのライブは、同じ曲でも毎回アレンジもパフォーマンスも大きく異なっていて、同じ曲にも好きなバージョンができてしまう。
 このジャベール警部のパフォーマンスも、歌う人、歌う場所によって歌唱が大きく異なっています。それを楽しむのもミュージカルの面白さ。確かに「好き」「嫌い」という嗜好での評価があり得るのはわかりますが、「良い」「悪い」と言った相対的な解釈ではなく、いろんなレミゼの違いを楽しむスタンスで鑑賞したいものですね。