取締役の任期伸長に関する定款決議と在任取締役の任期について

 今日は、株式会社の取締役の任期伸長に関する定款決議関連のお話しです。

<ポイント>
・取締役の任期伸長決議が可決されると、在任取締役の任期も伸長される。

1.会社法の定め

 新会社法(もはや「新」とは呼べなくなりつつありますが)施行により、全ての株式に譲渡制限を設定している、いわゆる閉鎖会社では、取締役の任期を最長選任後10年以内に終了する事業年度のうち、最終のものに関する定時株主総会終結の時まで伸長できることになりました。

 これは、実は案外知られていません。

 昔からある会社では、旧商法の定める処により、取締役の任期は、「2年以内の最終の決算期に関する定時株主総会終結の時」と定めていらっしゃったところがほとんどではないかと思われます。
 取締役の任期は、別に半年でも1年でも構わないのですが、短くすると、そのたびに変更の事務手続きや、登記申請が必要となります。ですので、特段事情のない場合は最長の任期に設定しておく方が経費的には安く上がることになります。

 そして、全ての譲渡制限を設定している会社では、株主総会において定款変更の手続を経ることにより、取締役の任期を上記の通り、「最長10年」に伸長することができるのです。

2.株主総会の決議

 ところで、株主総会の決議により取締役の任期を変更しようとする会社は、ほとんどの場合、現在の任期は上述のように「2年以内の最終の決算期に関する定時株主総会終結の時」までと定めていますので、以下はこの前提でお話しします。

 株主総会には、決算承認を行う「定時株主総会」と、必要に応じて招集される「臨時株主総会」がありますが、任期が終了する定時株主総会で任期に関する定款変更を行う場合を考えましょう。

 株主総会で任期伸長を可決すれば、その効力は直ちに発生します。従って、その株主総会が終われば退任するはずだった取締役の任期も、伸長した年数に応じて伸びることになります。簡単に言うと、選任後2年経っていて、任期が10年に伸長された場合、残り8年間取締役を務めることになるわけです。

 これは、換言すると取締役の役員変更登記をしなくて済むことになります。

3.任期伸長決議と役員変更登記の関係

 役員の任期を伸長する決議をすると、在任取締役の任期も伸長されるため、その時点での役員変更登記を経る必要はありません。しかし、その時点での役員変更を勧め、定款変更決議前に一旦取締役の辞任から選任決議を経た上で、任期伸長の決議を行う流れの議事録を散見することがあります。
 確かに、その時点から11年間のスパンで考えると、どちらも一度は役員変更登記をしなければならず、回数だけを考えると同じになります。
 これは、会社経営レベルでの問題ですから、一概にどちらがいいかを判断することはできませんが、私は特段の理由がない場合は、辞任から再選任というある意味技巧的な議事構成をすることなく、普通に任期伸長決議だけを行えばいいのではないかと考えます。

まとめ

 役員の任期がながくなると、選任手続を忘れがちになってしまいます。選任懈怠や登記懈怠は過料の対象となりますのでお忘れなきように。