10月 10th, 2012|ブログ|

 民主党所属の衆議院議員が会合の中で「尖閣諸島の登記名義人を中国政府としてもよい」と発言したとの報道がありました。
 全文を読めば、これは、日本に領有権があることを強調するためのレトリックであり、この言葉だけが一人歩きしてしまうのは発言者に酷であるとは思いますが、今回は、この発言を素材として、国有財産の意義と、外国政府が日本国内において不動産を所有する場合の手続について概観してみたいと思います。

1.外国政府が日本国内で不動産を取得する手続

 まず、外国政府が日本国内で不動産を取得する場合の手続について概観します。

一般人が購入する場合

 一般人が普通の宅地を購入する際、特段の制限はありません。私的自治の原則に基づき売買契約を締結し、権利の取得喪失を第三者へ対抗できるようにするため、登記を行います。ただし、農地の権利移転を行う場合、政策的理由から農地法による許可を経ることが必要となり、その詳細は農地法に定められています。

外国政府が購入する場合

 では、外国政府が不動産を購入する場合はどうでしょう。無制限に権利の移転を認めてしまうと、国土全ての所有権が外国政府のものとなり、日本という国の存在を揺るがすことになりかねません。
 従って、外国政府が不動産を取得するには公的機関の関与が必要となります。前述の農地所有権を移転する場合には農地法に基づき農業委員会の許可が必要となりますが、相手が外国政府ですから、当然こちらも政府の関与が必要となります。
 そして、その関与は政令に基づいて行われます。

外国政府の不動産に関する権利の取得に関する政令 - e-Gov

 政令によると、外国政府と私人である不動産所有者とは、売買契約を直接締結することはできず、条件交渉を行った上で、不動産の取得を日本国政府に委託しなければならない、とされています。
 その上で、取得の承認申請を行い、政府が承認した場合は、まず、政府が当該不動産を同条件で取得し、その後、外国政府へ権利を移転させる流れになります。
 取得を目指す不動産が国有の場合、交渉先が財務大臣になりますが、手続の流れは同じです。

 この流れをまとめましょう。

1.外国政府と不動産所有者の契約交渉
2.外国政府からの取得委託の申込及び承認の申請
3.日本国政府による承認
4.不動産所有者から日本国政府への権利移転
5.日本国政府から外国政府への権利移転

 という順序になります。購入できる外国政府も指定されています。余談ですが、中華人民共和国もその中に入っています。

2.尖閣諸島国有化における「国有化」の意味

 インターネットで閲覧できる財務省の「国有財産Q&A」によると、国有財産とは、文字通り国が所有する財産で、個人や企業が所有する「私有財産」、地方公共団体が所有する「公有財産」以外の財産であると定義されています。また、「国民共有の財産」でもあると記載されています。
 そして、国有財産は、さらに「行政財産」と「普通財産」に分類され、「行政財産」についてさらに「公用財産」「公共用財産」等に分類されています。

 では、国有化された尖閣諸島は、この分類ではどのカテゴリーに属することになるのでしょうか?
 これは、なかなか面白い検討です。「普通財産」については、直接に行政目的に使われることがなため、民間への売り払いや貸付等が行われています。そう考えれば、民間から買い取る尖閣諸島が「普通財産」に属するとは考えづらい。
 かといって、直接的に行政目的に使われるとも考えづらい。

 この分類は、実務的な視点に依っていますので、尖閣諸島の国有化にあてはめること自体、無意味でナンセンスなのかもしれません。

 しかし、大切なことは、国有化によって尖閣諸島が「国民のために有する」財産であることが明確になる、ということです。

3.尖閣諸島の登記名義人を中国政府にしてもよいか

 外国政府が不動産を取得するには、まず、地権者との意思の合致が必要であり、日本国政府の承認も必要となってきます。現在の政府は尖閣諸島の国有化を目指しているそうですが、国有財産は「国民共有の財産」です。
 そうであるならば、国有財産は合理的な理由なくして安易に外国政府に売り渡すべきではない、と言えるでしょう。
 前述の議員の発言については、それが極端な喩えであったのだとしても、「国有財産」の意味を軽視しているとの批判については甘受しなければならないでしょう。

4.まとめ

 今回は、外国政府が不動産取得をする場合の手続と、不動産を国有化することの意義について検討しました。
 議員の発言を素材としてはいますが、このブログは政治的に中立であり、発言を批判することを目的として出稿している訳ではありません。
 しかし、一般論として私見を述べることが許されるなら、名刺に「弁士」と書くような方々は、もっともっと言葉の持つ重み、深さを学ぶべきであるとは思います。

 なお、本稿は行政書士業務とは無関係であることを付言しておきます。

最後までお読み頂いてありがとうございます。
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