後見監督人制度の有効活用を!

 今日は、成年後見に関するお話しです。

  • 家庭裁判所は、後見監督人制度を積極的に活用すべきである。
  • 成年後見制度は、法律系資格者の食い扶持のために活用されるべきではない。
  • 使命感のない国家資格者は、その資格に関わらず成年後見人になるべきではない。

弁護士の逮捕

 弁護士が業務上横領の容疑で逮捕されました。東京弁護士会の元副会長という肩書き付きです。横領の被害にあったのは被後見人。法的なサポートが必要と家庭裁判所が判断して後見人になった弁護士にお金を横領されたのです。
 これを「弁護士の信用を失墜させる。」という人がいるかも知れませんが、問題はそこではない、と私は思います。私が2011年10月に書いたブログによると、成年後見に関する10ヶ月間の実態調査で183件の悪用が発覚、被害総額は18億円を超えていました。司法書士が関与したケースもありました。

失墜の危機にあるのは成年後見制度そのものである、と言えるでしょう。

成年後見の実態

 成年後見人は、家庭裁判所の監督に服し、家裁は必要に応じ後見の事務の報告を求めたり、財産の状況を調査することができます(民法第863条)。
 つまり、事務の報告は必要的ではないわけですが、実際の成年後見では、司法書士などの職業成年後見人がせっせと後見事務報告書を提出すると言われています(伝聞です)。
 何故でしょう?
 答えは簡単、報酬付与の申立をするためです。

 こうして成年後見は、法律系資格者の「ビジネスフィールド」になっています。

 もちろん、それで成年後見人がしっかりと保護されているならば、問題はありません。しかし、法的保護が必要な全ての人が資金に余力がある訳ではありません。
 資金に余力のない要保護者には簡単に成年後見人が見つからず、家庭裁判所は名簿を利用して資格者に依頼します。それは、重病人が救急搬送先を探せずに病院から断られるような状況にも似ています(もっとも、この場合重病人の資力は問題になっていませんが)。

「お金を持っている人は相続もあるし、報酬も取れるから成年後見人を引き受けるが、そうでない人の場合は引き受けない。」

 このような発想で成年後見制度が維持できる訳はないのです。

成年後見を適正に運用するには

 私は、成年後見制度を適正に運用するために、後見監督人を有効活用するべきである、と主張しています。
 家庭裁判所が選任した弁護士が業務上横領の罪を犯し、家庭裁判所は職権で後見監督人を任命できるにも関わらずそれをしていなかったということであれば、家庭裁判所の任命責任を問う世論の声が上がっても不思議ではありません。
 こういうとき、最も悪いのはその弁護士なはずなのに、流れは一気に家裁の任命責任へ流れる可能性をはらんでいるのが日本の体質です。

 弁護士資格は法律系国家資格の最高峰であり、弁護士法には、「社会正義を実現することを使命とする。」と定められている誇り高き職業です。
 司法書士にも成年後見をやっている人はいらっしゃるでしょうし、行政書士の中にもいるでしょう。
 それらの国家資格者が成年後見業務を行うときは、より高い職業倫理と任命されたことの責任感をもって業務に向き合うことが大切ではないでしょうか。