掃除機はいつかけるべきなのか

 依頼を受けていたゲストハウスの開設を、申請者が断念なされました。近隣からの要望を受けて説明会を開いて、その後の話し合いで断念されるということになりました。

 私は今その説明会から帰ってきて、深夜にこの文章を書いています。

 ここでは、別のゲストハウスで私が相談を受けた事例を(守秘義務があるため)少し脚色してご紹介致します。

掃除機はいつかけるべきなのか

 あるゲストハウスに滞在していらっしゃった某国の女性が、夜の8時前頃に掃除機をかけました。元からゲストハウスの存在を快く思っていらっしゃなかった隣家の方が、その掃除機の音をうるさいとして、インターホンを押して苦情を言われました。
その苦情を受けた女性は、恐怖心を抱いたとしてホストに連絡を入れました。

 というお話しです。なお、その隣家の方の苦情は保健センターにも入り、保健センターから私に連絡が入り、ホスト側からも私に連絡が入り、別の所からも私に連絡が入り、という展開をたどって最終的には収束しています。

問題点

 この一連の出来事は、ある意味で京都のゲストハウスで起こりえる問題を象徴している、と私には思えます。異国から宿泊サービスではなく安価に「場所」を借りたいとしている外国人の観光客がいらっしゃることは事実です。
 そして、それを快く思っていない近隣の方々が多いこともまた事実といえるでしょう。
 ストレスが怒りという感情になってはき出され、それが悲しみに変わって伝わっていく。負のスパイラルというのは、まさにこういうことなんだろうな、と思います。

解決方法

 この問題には幾つかの解決方法が考えられます。
 代表的なものは「ゲストハウスを作らせない」というものです。ゲストハウスができなければ、こういった問題は生じません。もし、仮にお隣に引っ越してきた人が夜に掃除機をかける習慣があったとしても、家で文句を言うくらいで終わるのでしょうか。

 しかし、私にはもう一つの解決方法があるように思えます。それは「楽しむ」という方法です。
 インターホンを押して「インジャパン、クリーンハウス、ナイト、NG、オーケー?」と単語を並べるだけでも意図は通じるはず。それなら、旅行者も「そうなんだ」と思えることでしょう。気の利いた旅行客ならきっとこう返してくれるでしょう。「マイカントリー、イッツノーマル」と。そんな経験を繰り返せば、知見が広まり、世界中に友達ができる可能性もゼロとは言えません。

 もちろん、これを説明会で言おうもんなら火のような反論にあうことは分かっています。英語が話せない人はどうするんだ。話せても相手に通じなければどうするんだ。相手がナイフを持っていたらどうするんだ。ヌンチャクを持っていたらどうするんだ。既婚者なのにいきなりプロポーズされたらどうしてくれるんだ、一目見たらイケメン過ぎて恋に落ちたら一体どう責任を取ってくれるんだ…。

 そう、結局、何もなければ何も起こらない、という選択が一番無難なのかもしれません。

後日談

 この話しにはオチがあります。その女性は某国からいらっしゃっていた訳ですが、私がその某国料理を食べに行った際にその話題をすると、店主さんは「某国では夜に電気代が安くなるので、掃除を夜にする習慣があるんです」と教えてくださいました。

 某国人が隣に来なければ、掃除の音も、某国では夜に掃除機をかけるという習慣を知る機会も発生しえません。どちらがその人の人生を幸せにするのかは、その人が何を大切にしているかに依るのでしょう。

 私は、できればお隣にゲストハウスはできて欲しくはありません。しかし、所有者が開設を決断して法治国家のルールにのっとって手続を進める、というのであればそれは尊重します。

まとめ

 色々なことがあった一夜でしたが、ご依頼主様が心安らかな気持ちで新しい朝を迎えられることを願って。
 そうそう、さらにオチをつけられそうです。このご依頼主様とは、ずっと以前から某国料理をご一緒する約束をしているのでした。うん、きっと新しい朝は素敵なはじまりになるはずだ。だって僕の大切な依頼者様なのだから。