孫と養子縁組した場合における相続資格の重複について

 今日は、珍しい中では頻出といえる、相続資格の重複ケースについて検討します。このブログでは最初にポイントを記載していますが、本稿は設例による検討のため、ポイントは最後のまとめとして記載します。

設定

(被相続人)
たかぎ○○○○          平成23年2月1日死亡
平成24年12月7日亡 |- 長女 □□□子
   ∥           |      |------長男 ◇◇◇(相続人)
   ∥--------- 養子 ▲▲▲男(相続人)
   ∥           |                
妻 △△江         |- 養子 ◇◇◇(相続人)
平成24年2月1日死亡     平成22年2月1日養子縁組

 わたくし、初!アスキーアート?が相続関係説明図です(モバイルからご覧の皆様におかれましては表示が崩れている可能性があります。)。見やすくするため、相続関係説明図として必要な情報を一部省略しています。

たかぎ家におけるイベントを時系列で記載すると、以下のとおりとなります。

1.たかぎ○○○○と△△江が婚姻
2.長女□□□子が出生
3.たかぎ夫妻が▲▲▲男と養子縁組
4.長女□□□子と養子▲▲▲男が婚姻
5.たかぎ夫妻にとっての孫◇◇◇が出生
6.たかぎ夫妻が孫◇◇◇と養子縁組
7.長女長女□□□子死亡
8.妻△△江死亡

 この時系列で、たかぎ○○○○が死亡し、相続が発生した場合における相続人と相続分を考えます。

相続人の検討

 まず、妻と長女が先に死亡しています。長女には子◇◇◇がいるため、被相続人にとって孫となる◇◇◇は代襲相続権を取得し相続人となります。
 さらに、養子縁組している▲▲▲男と◇◇◇も相続人となります。この時、孫◇◇◇と養子◇◇◇は同一人物なので、相続資格が重複していることになります。そこで、◇◇◇の相続分が問題となります。
 

相続分の検討

 この事例で、孫であり養子でもある◇◇◇は、代襲相続分と、養子としての自己の相続分をあわせて取得することができます(昭和26・9・18民事甲1881回答)。
 つまり、相続分としては、▲▲▲男が3分の1、◇◇◇が3分の2となります。
 この計算方法は、民法に定められている原則通りです。つまりこのケースは「調整の必要がない」事例であると言えます。
 相続資格が重複する場合、公平性の見地から相続分を調整する事例がありますが、これは原則通りです。その理由として、相続の権利主体がもとは□□□子であったのが、その死亡による代襲相続によって、孫である◇◇◇に移ったためだ、と説明されます。
「最初から権利主体が一つであったのではなく、二つあった権利主体の一つに法が定めた代襲相続が発生していたために相続資格が重複しただけなんだから、調整の必要はないでしょう。」という意味でしょうか。

別の視点からの検討

 一方、▲▲▲男の視点から見ると、その相続分は少し違って見えるのではないか、と思われるかも知れません。
 被相続人の遺産単位を300とした場合で考えます。仮に長女□□□子が相続発生時に存命で、その後に死亡した場合、▲▲▲男は、被相続人の遺産100と、妻□□□子が相続した遺産100の半分である50を相続することができ、合計150の遺産を相続することができるからです。

 しかし、これは「たられば」のお話しであって、相続に当てはめるべきでない思考である、と私は思います。

まとめ

 財産をたくさんお持ちの場合は、相続人の頭数を増やすために孫と養子縁組する相続税対策は今でも行われており、今回のようなケースは実務的にも遭遇する可能性が高い事例です。しかし、その処理は原則法律どおりであって、事例によって例外的な取扱をしているにすぎません。次回のブログでは、その「例外的な事例」について検討します。
 なお、今回の設例で養子と実子が婚姻しているのですが、お気づきになりましたか?民法第七三四条第1項但し書きにより、養子と実子の婚姻は可能ですね。

ご参考になさってください。