廃棄物処理業の基礎を知っておこう

 昨日、事務所の近くにある同志社大学の職員が、廃棄物処理法違反の容疑で逮捕されるという事件が発生しました(関連会社の社長として)。インターネット上の第一報は情報が少なく「いきなり逮捕?」という気がしたのですが、その後、京都市からの指導に従わなかったという実態が報道されはじめています。
 つい先日もスキーバスの運行会社による数々の法令違反が明るみになったばかりですが、国や自治体の定めたルールを守ることは、法治国家の大原則であるはず。レベルの高い法学部を持つ大学が自ら無許可を黙認していたとは嘆かわしい事態です。

 本稿では、一般に知られていない廃棄物処理業の許認可制度について分かりやすくアプローチしてみます。

  • 廃棄物は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分類して定義されている。
  • 廃棄物処理業を行うには許可が必要となる。

産業廃棄物について知っておこう

「廃棄物」とは

 廃棄物については、その根拠法である「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の第2条第1項に定められています。

第二条  この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。

 さらに、廃棄物は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分類され、産業廃棄物以外を一般廃棄物と定義しています。
 事業活動で生じる全ての廃棄物が産業廃棄物とされるのではなく、政令によって定められた種類の廃棄物のみが産業廃棄物となります。ですので、事業活動によって生じる「一般廃棄物」もあるということになります。
 なお、廃棄物のうち「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するもの」として政令で定められたものは、それぞれ「特別一般廃棄物」「特別産業廃棄物」と分類されます。特別産業廃棄物の代表例は廃油です。

一般廃棄物の処理

 一般廃棄物の処理は、市町村長の廃棄物処理計画に基づいて実施されます。たとえば京都市であれば、家庭用ゴミは京都市が収集と運搬を行い処分しています。
 しかし、事業によって生じる一般廃棄物(実務的には「事業系一般廃棄物」と呼ばれます)は、事業者自身で処理するか、業者に委託する必要があります。
 当然、全ての事業者が一般廃棄物を自身で処理することはできませんので、一般廃棄物処理が「業」として成立し得ることになります。

一般廃棄物処理業

 一般廃棄物の処理業は市町村長の許可が必要となりますが、市の廃棄物処理計画と密接に関連することから、簡単に許可がおりる種類の申請ではありません。現に、京都市のホームページにおいても要件記載や申請書ダウンロードができる箇所はなく、新規に許可を受けるのは困難であるのが実情です。
 後述する産業廃棄物処理業同様、許可要件は厳格です。

産業廃棄物とは

 産業廃棄物とは、法によれば「一般廃棄物」以外のものと定義されていますが、実質的には「事業活動によって生じる廃棄物のうち法律が定めているもの」と換言できます。
 つまり、事業活動によって生じる廃棄物全てが産業廃棄物になるのではなく、政令で定められている20種類だけが産業廃棄物とされるわけです。その他は一般廃棄物の範疇になります。

産業廃棄物の種類

 産業廃棄物は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」の第2条に定められています。条文はややこしいので省略しますが、それを整理すると、20種類が産業廃棄物と定義されていることになります。
 その種類は、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず等になります。そして、それとは別に、感染性産業廃棄物等が特別産業廃棄物として定義されています。

産業廃棄物処理業

 廃棄物は、分別・保管され収集運搬を経て、再生されるか、或いは最終的に処分されるという道筋を通ります。
 産業廃棄物は、事業活動によって生み出されるものですので、それは自分で処理することが原則となります。
 しかし、全ての事業者が自分で処理できる訳ではありません。ですので、産業廃棄物処理が「業」として成り立ち得ます。
 つまり、事業者が自ら排出した産業廃棄物の処理を業者に委託して対価を支払うというビジネスモデルですね。
 この産業廃棄物処理業は、無制限にしておくと、囲いもせずに保管して周囲の環境に影響を与えたり、山に捨てに行かれたりする可能性があります。一般廃棄物とは特に区別して産業廃棄物にしている訳ですから、その保管や収集運搬にはより厳格な管理が必要となるべきです。
 ですので、産業廃棄物処理業は都道府県知事の許可が必要となり、厳格な要件を満たす必要があるのです。

産業廃棄物処理業の許可要件

 産業廃棄物処理業は、「収集運搬」業と「処分」業に分類されています。
 もちろん、申請が多いのは「収集運搬」です。この許可を得るためには、まず、講習会を受講し、修了証の交付を受ける必要があります。
 また、その他、ごく大まかに言えば以下の要件が必要になります。

  • 財政的な基礎が十分にあること。
  • 事業計画が適法で無理がないこと。
  • 運搬施設が確保できており、飛散や流出によって悪臭を生ずる恐れがないこと。
  • 経営者や一定の管理者が欠格要件に該当しないこと。

 申請書類は量がやや多く煩雑で、行政書士業の中でも「鉄板業務」と呼ぶ人もいます。

まとめ

 以上、廃棄物処理業の許認可制度について概観してみました。
 産業廃棄物は、家庭ゴミのような収集の対象とはなりません。ですので不法に投棄したり、放置して近隣に迷惑をかけるという事例が後を絶たず、許認可制度の運用は厳格化していると言えます。
 今回は、同志社大学の施設を管理する関連会社の代表者や職員が、一般廃棄物の処理を無許可で行い逮捕されたということで、廃棄物処理法第7条違反ということになるのでしょう。
 ここで重要なことは、同志社大学が、外部委託せずに自ら廃棄物処理をしていたとすれば、それには許可も届け出も必要なく、法令に違背はしていなかったという点です。
 関連会社を作り、そこに委託していたということは、その関連会社は「業」として廃棄物の収集運搬をしていることになりますので、許可が必要となる。ですので、今回は関連会社の役員が逮捕されているのです。

 いくら実質的な要件を満たしていても、形式的に法令に違背していると、それは処罰を受ける対象となる。カレー屋さんの廃棄物転売問題にしてもそうですが、最近は行政書士業務に関わる事件が多く、色々と考えさせられます。
 行政書士が内部監査を行い、それに「信用」という担保が社会的に与えられるのであれば、行政書士にとっての大きな職域拡大につながると思うのですが、行政書士にそこまでの社会的信用があるのかどうか(笑)。

 いずれにせよ、法令遵守は基本中の基本。あらゆる事業主体は再チェック・定期的なチェックの必要があると言えそうですね。

「同志社大学 行政書士 京都」で表示される行政書士に頼めば良かったのに…というオチを考えたのですが、検索してみたらまさかの2ページ目でした(笑)。絵本ネタなんて書かず、もうちょっと真面目にウェブに取り組みます。