14ひきシリーズの【ろっくん】に関する検討

 今日はのどかな日曜日(ちょっと寒いけど)。私がかねてから疑問に思っていた、絵本『14ひきシリーズ』における【ろっくん】の位置づけについて訴えたいと思います。

  • ろっくんは、ドジばかりしているように思える。
  • 作者がろっくんの「いいところ」とどのように捉えていたのか知りたい。
  • ろっくんが活躍するシーンが見たい。

うさぎの写真

絵本『14ひきのシリーズ』

 この絵本は、いわむらかずおさん作で童心社から出版されている一連のシリーズです。
 主な登場動物は、三世代が一つの住居に起居する14ひきのねずみ達です。
 綺麗な絵はもちろんのこと、季節の草花、虫がさりげなく描かれ、大人が読んでも楽しめる内容です。また「おつきみ」「もちつき」など日本の伝統行事も描かれており、このねずみが恐らく日本国籍であろうことが推察されます。

 シリーズとして12冊が刊行されており、私はその全てを持っております。各回とも読み返した回数は100回を超えるでしょう。文字数は少ないのでほとんど暗記しています。

14ひきのキャラクター構成

 登場する14ひきには、それぞれキャラクターがあるようです。おじいさん、おばあさん、おとうさん、おかあさんはさておき、10ぴきの子ども達は個性豊かに描かれています。長男らしい いっくん、ひょうきんだけどやるときはやるにっくん、しっかり者のさっちゃん、いずれは海外留学しそうなよっちゃん、エース的なごうくん、おっちょこちょいのろっくん、おてんば娘のなっちゃん、身軽でやんちゃ盛りのはっくん、まだまだ幼いくんちゃんととっくん…。
 この中で、ろっくんだけが毎回「やらかして」しまいます。というか、ろっくんだけがドジ、どんくさく描かれていて、その扱いが不当?な気がして納得できないのです。
「ろっくんもいい所を描いてあげてほしい」という思いです。

ろっくんにまつわるエピソード

 たとえば、ごうくんとはっくんは高い所もすんなり登れる。なっちゃんだって身軽です。でも、ろっくんだけはいつも下の方で一生懸命登ってる最中だったり、落ちかけていたり。散歩のときだって躓きそうになっているのはいつもろっくんだし(なっちゃんも一回はありましたが)、棘は刺さるし、かえるくんを危険にさらしてしまうし、川にははまるし、パンツは落とすし、寝起きは悪いし、遅れてバタバタ走ってくるし。お風呂ではいたずらされるし、木の実が落ちてきてあたる不運もろっくんです。
 びっくりするシーンでは一番怖がってそうに描かれているし、みんなまだ働いているのに一人でこっそり差し入れ食べたりとか(しかもコソコソ感溢れた感じで)、最年少のとっくんがおやつを多く食べていると文句を言ったりとか。『あきまつり』では迷子になったろっくんがそのままテーマに引き継がれています。

 どうもろっくんだけがこんな感じなんです。

 他の子はどうかというと、長男いっくんはしっかり者だし、にっくんは力持ちで一人二役でがんばっていたり。ろっくんを優しくフォローしているのはにっくんが多いですよね。
 ごうくんには、最後にお風呂にはいるおかあさんのために「まきをくべてあげる」という象徴的なシーンがあります。はっくんはいっつも高い所にのぼっていて、先頭を走っている。

 こうやって書き並べると、ろっくんだけがなんだか不当な(笑)扱いを受けているように感じませんか?

 もちろん、比較的あたらしい『とんぼいけ』では、ろっくんが「やらかしている」シーンがなくなり、最後にはトンボを手にとめていますし、『さむいふゆ』では、とんがりぼうしゲームにおいてにっくんとペアで大勝ちしている様子が描かれています。
 でも、ポジティブなシーンというのは本当にこれくらいじゃないでしょうか。

何故ろっくんだけが?

 私はずっと、このろっくんだけが際だってドジに描かれているのを、ある意味では現実的であると納得しつつも「絵本の世界なんだからちょっとくらい長所を作ってもいいのでは」と思っていました。

 このトピックについて検索したり、知恵袋なんかも見てみるのですが、同様の疑問を抱いている方は見受けられませんでした。
 絵本屋さんを開業しながら大学講師を務められている方の講演会にも参加し、質疑応答で挙手して質問してみましたが、明確な答えは頂けませんでした。

 私の知り合いで「いわむらかずおさんは兄弟が多く、ろっくんを自分を重ねているのではないか」と言った人がいました。いわむらさんが何人兄弟か知らないとのことでしたが、これは興味深い見解と思います。

 もちろん、現実の世界では、勉強もダメ、運動もダメという子がいることはいるのでしょう(ろっくんが勉強できないかどうかは定かでない)。
 でも、どんな子にも個性があって、「ここを核にして育っていってくれれば」というトコロがあるはずです。

 そういう意味では、高い所に登れなくってもいいから、人が一生懸命働いている時に自分だけ差し入れをコソコソと食べて欲しくなかった(笑)。マジメであったり、一生懸命であったり、そういう、「そこ、大事だよね、ろっくん!」と言えるシーンが欲しいのです。

14ひきのこれから

 私は、14ひきの中ではにっくんが好きです。花弁をかぶってとっくんを追いかけ回すような大らかさと、落ち込むろっくんに寄り添えるさりげない優しさは、読む度に心を癒やし、温めてくれます。

 そして、人が成長していくのと同じように、ろっくんが少しずつ成長していくのを感じられるような次回作を楽しみにしています。

 本稿は、ろっくんの描かれ方に対して検索される皆様に対し訴求するために出稿します。ろっくん像に対し自説をお持ちの方は、お問い合わせフォームからでも構いませんしフリーダイヤルをお使い頂いても構いませんので、是非その見解をお聞かせ頂きたいと思います。

 ちなみにですが、シリーズ全部が大好きですが、どれか一冊と言われれば「おつきみ」が好きです。皆様はいかがでしょうか。